ラ フェラーリ
公開 : 2014.04.30 23:50 更新 : 2017.05.29 18:53
■どんなクルマ?
ラ フェラーリは恐らくきっと世界で1番速く、1番刺激的なハイパーカーであろう。これは、マクラーレンP1とポルシェ918スパイダーというライバルあってこそ意味を持つ言葉である。
肝心な点は、ラ フェラーリが950bhpという途方もない馬力でライバルを勝っており、車両重量の軽さでも明らかに優勢なことなのだ。
いずれにしてもこれは史上最強のフェラーリであり、288GTO、F40、F50、エンツォという4つの歴代スペチアーレ・モデルを除いては、ラ フェラーリに匹敵するモデルはこれまでに存在したことがないと言えよう。そして、このクルマを手にできるのは、今後2年間にデリバリーされる499人の選ばれたオーナーだけという特別なモデルなのである。
ボディの中心部、つまり2つのカーボンファイバー製シートの後方には、6262ccの自然吸気V12エンジンが備わり、最高出力800psを9000rpmで発生させる。最大トルクは6750rpmで発生する71.4kg-mだ。この値だけですでに、スクーデリア・フェラーリ最後のV12を搭載したF1、1995年の412Tを十分上回っている。それにもかかわらずシートの下には60kgのリチウムイオン・バッテリーと25.7kgのモーターが備わり、さらに162psと27.5kg-mを上乗せするというのだ。これによりシステム総合の最高出力は963ps、最大トルクは98.9kg-mに達する。
ただし、ライバルであるポルシェとマクラーレンとはまったく異なっている点もある。このフェラーリのパワーユニットはいついかなる時でも最高出力を発揮できるよう設計されているのだ。つまり、マクラーレンP1のようなe-modeは設定されていないのである。その代わりにドライバーが望めばハイ・カーズ・システムがいつでも推進力を発し、963psというとてつもないパワーを発揮するのだ。
こうしたエネルギーはこのフェラーリのために作り上げられたゲトラグ製7段DCTを介して後輪のみに送られる。これに、ファイナルドライブに直接動力を伝える特製ギアと電気モーターが備わることで、従来のクラッチを採用しない方式をとることができたのだ。これはスーパーカーのエンジニアリングにおける最重要課題である軽量化を達成した一例であるが、このクルマにとってはただの一例に過ぎない。
■どんな感じ?
ハンドルを握る人間がどれだけのスピードを予想していようと、どれだけ刺激的でノイジーな走りを期待していようと、ラ フェラーリはその倍のものを与えてくれる。いや、倍以上と言っていいだろう。
スターターボタンを押し、右の指先に触れるパドルギアを軽くたたき1速に入れる。トラックへと地響きをたてて向かっているだけで、なんとわたしは興奮で体が震えていたのだ。しかし、意を決してわたしはマネティーノ・スイッチをレースモードに設定した。
乗り味の第一印象は滑らかで穏やかなものだ、ステアリングやブレーキぺダルは驚くほど軽い操作感だが、本物のレーシングカーがだけがもっているダイレクトな感覚にあふれている。スロットルはまさに法外と呼べる信じられないレスポンスを示す。バックストレートに差し掛かった時だったが、4速でハーフスロットルを与えただけなのに、まるではじけ飛ぶような加速に見舞われたのだ。
これこそが、エレクトリック・パワーと巨大なV12エンジンの両方を備えた効果なのである。低回転域ではモーターがトルクを提供し、それから回転が3000rpmくらいまで上がるとV12エンジンが役割を引き継ぐ。この移行はあまりにスムーズなので誰も認識できないと思われるほどだ。それゆえこのクルマにはまるで10ℓのV12エンジン、それも低回転から猛烈なレスポンスを発揮する代物が搭載されているように感じる。
加速は途方もなく急速に高まるので、ほとんどの人は生死の合い間をさまような恐怖を味わうだろう。そのうえ、この加速が弱まる様子はまったくないのだ。加速、ノイズ、バイオレンス、それらが一斉にドライバーを襲い、リミッターが介入する9250rpmまでクランクシャフトが猛回転を続ける。最初にコースに出た時3速でリミッターまで回してみたが、体中の毛が逆立ち、もうわたしはわけもなく叫び声を発することしかできなかったのだ。
■「買い」か?
とても残念なことだが、すでに499台の枠は埋まっており、そもそも厳しいことで有名なフェラーリの審査を通らないことには、われわれはこのクルマを手にすることができないのである。
もしもこのクルマ、ラ フェラーリを望むなら、フェラーリの正規ディーラーで最低でも2台の新車を最近購入していて、過去10年に合計6台を所有していなければならない。
最後に誰もが関心のあるこの質問に答えよう。ラ フェラーリは、マクラーレンP1とポルシェ918スパイダーに比べて優れているのかどうか。さらにあのエンツォの後継者としてこのクルマはふさわしいのか。
ラ フェラーリは十二分にエンツォの後継者として立派な素質を持っている。実際のところ、エンツォを多くの点で勝っていながら、同時によりイージーでスイートなモデルになっている。
そして、マクラーレンと918よりも優れたハイパーカーなのかどうかという点についてだが、われわれが適切な答えを出すにはもう少し時間が必要だ。ただし、これだけは確かに言い切れる。このラ フェラーリはマラネロが送りだした本物のマスターピースと呼ぶにふさわしいモデルである。
(スティーブ・サトクリフ)
ラ フェラーリ
価格 | €1,200.000(1億7000万円) |
最高速度 | 350km/h以上 |
0-100km/h加速 | 3.0秒未満 |
燃費 | NA |
CO2排出量 | 333g/km |
乾燥重量 | 1255kg |
エンジン | V型12気筒6262cc + モーター |
最高出力 | 963ps/9000rpm |
最大トルク | 98.9kg-m/6750rpm |
ギアボックス | 7速DCT |