【白昼堂々盗んでいく】現代の車両犯罪 新しい手口、海外では恐れ知らずの犯行も

公開 : 2021.10.24 06:05

リレーアタック、触媒コンバーターの盗難、車上荒らしなど、英国での車両犯罪の実態と対策を紹介します。

英国で盗難に遭った車両は8万台以上

映画「ミッション・インポッシブル」の主人公、イーサン・ハントでさえ、愛車の盗難を防ぐことができなかった。今年8月、俳優のトム・クルーズが所有するBMW X7は、彼が滞在していたバーミンガム中心部のグランド・ホテルから盗み出されたのだ。

車両には追跡装置がつけられていたため、しばらくして5kmほど離れた場所で回収された。CCTVの映像には、3人組が中身の入ったバッグを持ってクルマから離れる様子が映っていた。

車両犯罪は減少傾向にあるが、新たな手口による被害も後を絶たない。
車両犯罪は減少傾向にあるが、新たな手口による被害も後を絶たない。

トム・クルーズはこの事件に激怒したと報じられているが、この事件を他人事と捉えることはできない。事件当時、犯行の手口としては、クルマのセキュリティシステムにキーを誤認させるリレーアタックが有力視されていた。しかし、数週間かけて警察当局が掴んだのはシステムが危険にさらされたということだけで、どのように盗まれたかは正確に把握できていない。

この事件は、現在の市販車が十分に洗練されているにもかかわらず、簡単に盗めるようになっていることを示している。今回、英AUTOCAR編集部は英国での車両盗難状況をもとに、最新の車両犯罪の実態を取り上げたい。

2020年、英国で盗難被害に遭ったクルマは8万9000台で、2019年に比べて2万4000台減少した。この減少は、ロックダウン中の移動が少なくなったことに加え、セキュリティの向上、一般市民の意識の高まり、取り締まりなどが要因となっている。

例えば、ウェストミッドランズ警察によると、過去1年半で100件以上のチョップショップ(盗難車を組織的な犯行グループが分解して部品にする場所)を特定し、閉鎖したという。

これは良いニュースだが、悪いニュースは、昨年の数字が2013年よりもまだ2万台も多いということだ。実際、全国警察本部長評議会(NPCC)は、5月から6月にかけての車両犯罪件数が前年同期比で3.1%増加したと報告しているのだ。

●英国での車両犯罪

1. 盗難の85%は夜間に発生。39%は所有者の自宅前で起きている。

2. 盗まれたクルマの72%は持ち主の元に戻らない。

3. 盗難車の30%は抹消されている。

4. 盗難の44%は無施錠のドアを開けて侵入しており、36%はリモートロックの信号を操作して侵入している。

5. 車内から盗まれるものの39%は貴重品。

6. 盗まれたクルマの37%は、新車登録から1年以上5年未満。

7. 盗難による精神的影響として最も多く報告されているのは「迷惑」で、76%にのぼる。

(数字提供:英国家統計局、Crime Survey for England and Walesより、2019年4月~2020年3月)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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