【白昼堂々盗んでいく】現代の車両犯罪 新しい手口、海外では恐れ知らずの犯行も

公開 : 2021.10.24 06:05

触媒コンバーターの盗難

リレーアタックも大規模な犯罪だが、触媒コンバーターの盗難は別次元だ。白昼堂々と道端やスーパーの駐車場で行われることが多いのである。狙いは触媒コンバーターに含まれる貴金属で、さまざまな人の手を経て、市場では天文学的な価格で取引されている。

BBCがイングランドとウェールズの警察から入手した情報によると、2019年には1万3000件のコンバーターの盗難が記録されている(2018年は2000件)。2020年4月、英国最大の自動車保険会社の1つであるアジアス社は、ロックダウン中にコンバーターの盗難が急増し、盗難請求の約3分の1を占めていると述べた(ロックダウン前は5分の1)。

触媒コンバーター窃盗の犯行の様子。1分程度のわずかな時間でも盗まれてしまう。
触媒コンバーター窃盗の犯行の様子。1分程度のわずかな時間でも盗まれてしまう。

しかし、良いニュースもある。英国内のコンバーター盗難のピークは今年の3月で、3245件が記録された。翌月、英国運輸警察はこの問題に対処するため、複数の機関と協力して大規模作戦を展開。1000個以上の盗難コンバーターが回収され、50人以上が逮捕された。その後、盗難件数は着実に減少し、7月にはわずか1378件となった。

NPCCは、警察間の連携が強化されたことに加えて、コンバーターに固有の参照コードなどを目に見えない特殊な方式でマークを付けたことが貢献したと評価している。このマークはSmartwater Group社が開発した高耐熱性製品で、整備工場でコンバーターに塗布することができる。

ウェストミッドランズ警察の犯罪防止マネージャーであるマーク・シルベスターは、次のように語っている。

「コンバーターにマーキングするだけでは盗難を防ぐことはできません。しかし、チョップショップなどでコンバーターを発見した場合、固有のコードを読み取ることで盗難品であることを識別でき、所有者を特定し、有罪判決につながる要素となり、さらなる盗難を阻止することができます」

●触媒コンバーターの盗難対策

1. 車庫に入れるか、コンバーターに手の届きにくい場所に駐車する(他のクルマに挟まれるようにして駐車するなど)。

2. クルマの動きを感知する警報装置をつける。

3. 窃盗犯は昼間に活動するが、クルマは見晴らしの良い明るい場所に駐車するようにする。

鍵の盗難

車両管理会社AX Innovationの調査サービス担当ディレクター、ニール・トーマスによると、自宅からクルマの鍵を盗まれることはまずないそうだ。「窃盗犯の多くは、被害者の家に入ることを嫌がります」と彼は言う。

このような窃盗犯は、自分たちのことを「ツーカー(twoccers)」と呼んでいる。「ツーカー」とは「無断で使用する」という意味で、自分たちを強盗とは思っていない。それなら安心、というわけではない。実際、トーマスの隣人は最近、目を覚ますと泥棒が踊り場に立っていて、クルマの鍵を探していたそうだ。

鍵を求めて宅内に押し入った犯人と遭遇することもある。
鍵を求めて宅内に押し入った犯人と遭遇することもある。

マーク・シルベスターによると、新しいキーフォブをプログラムすることも攻撃方法の1つだという。

「装置は自由に入手できますが、一般的に言って、ほとんどのクルマのECUは3つ以上の鍵を割り当てられないようになっています。ディーラーに依頼して、3つ目のキーを認識しないようにECUをアップデートしてもらいましょう」

●被害者の声

2年前、デビッドさん(仮名)は自宅でギャングにBMWの鍵を要求された。

「夜中の1時でした。寝室のドアを開けると、目出し帽をかぶった3人組が現れたんです」

鍵を渡すと、数秒後にはクルマも彼らも消えていた。

「警察は数分後に到着し、高速道路を走っていたわたしのX5をANPR(ナンバープレート読取装置)で追跡しました。結局、クルマは戻ってきませんでした」

デイビッドはこの経験を受け、リスクを避けてセキュリティを意識するようになったと言う。

「人々は、自分が持っている抑止力の層を確認すべきです。例えば、車道にクルマがはみ出ているのを見ると、それがどれだけ盗みやすいかを考えます。泥棒のように考えなければなりません」

●安全を守るために

1. クルマの鍵は1階に置いておく。宅内に侵入されるよりは見られたほうがいい。

2. ECUをアップデートして、鍵を2つまでしか認識しないようにする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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