【詳細データテスト】BMW 5シリーズ 高い完成度 動力性能と燃費を高次元で両立 個性は不足気味

公開 : 2021.10.30 20:25  更新 : 2021.11.05 02:40

BMWご自慢の直6をベースにした5シリーズのPHEVは、ミュンヘンの電動化戦略の切り札かと期待の一台。たしかによくできたクルマです。しかし、それは直4PHEVの強化版に過ぎず、独自の個性は主張できませんでした。

はじめに

すでにそうなっていてもおかしくないが、そうでなくても、BMWグループがいつ100万台目のプラグインハイブリッド(PHEV)を売っても不思議ではない。

彼らは2020年8月に、5シリーズのラインナップへ新たにPHEVを3モデル設定した時から、この台数の壁を破ることを想定していた。そのため、売れ筋の530eにはセダンとツーリングが設定され、後輪駆動か四輪駆動かも選べるようになった。

テスト車:BMW 545e Mスポーツ
テスト車:BMW 545e Mスポーツ    LUC LACEY

さらに、電動化サルーンへの興味をさらにもう少し高める要素になりそうなのが、今回取り上げる6気筒ハイブリッドの545eだ。BMWは10年前に、5シリーズ初のハイブリッドモデルであるF10世代のアクティブハイブリッド5を投入した。それ以来、思い描いてきた状況が、この545e投入をもって完成した。

アクティブハイブリッド5は、直6ガソリンターボに電気モーターを組み合わせたが、この2011年に使用したモーターの出力は、545eのそれに対して半分ほど。バッテリーの物理的な大きさは似たようなものだが、引き出せる電力は0.675kWhと微々たるものだった。EV走行が可能な距離は、ほんの4kmにすぎない。

アクティブハイブリッド5は実験的なモデルで、販売面では苦戦したこともあり、次の世代で本格的に販売されたPHEVの530eと330eは4気筒ベースとなった。

しかしここにきて、BMWはふたたびシルキーシックスにリッチなトルクを持つ駆動用モーターを組み合わせた。よりエネルギッシュで、ダイナミックで、商品力も強い電動化5シリーズの登場だ。これはプラグイン・スポーツサルーン普及の後押しとなりうるモデルなのだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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