【詳細データテスト】BMW 5シリーズ 高い完成度 動力性能と燃費を高次元で両立 個性は不足気味
公開 : 2021.10.30 20:25 更新 : 2021.11.05 02:40
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
545eのハンドリングは、現在のBMWに期待されるとおり、整っていて正確な、ニュートラルで安心感のあるものだ。とはいえ、BMWの水準からすれば、スポーティさや走り志向のテイストに溢れるとはいえない。
これは円熟味のある、運転が楽しいクルマだ。グリップやトラクション、精密さや安定感は、ちょうどワインディングロードを走りたいような気にしてくれるくらいにとどまり、BMWのスポーティな中型サルーンとしては熱中度や一体感が十分とはいえない。
その一因は、2tほどもある車両重量だろう。ボディコントロールはじつにみごとだが、それでも重さの影響は否定できない。そして、4WDシステムにも原因がありそうだ。しかし、テスト車に関しては、仕様によるところも大きい。
通常のMスポーツであれば、19インチホイールと通常タイヤの組み合わせだが、BMWが用意した広報車はオプションのMスポーツ・プロパッケージを装備。これをほしがるユーザーもいるだろう20インチホイールに装着されるタイヤはランフラットとなる。
また、コイルスプリングはノーマルのままで、アダプティブダンパーを組み合わせる。ほかのモデルであれば、ローダウンスプリングとアダプティブMサスペンションがセットされるところだ。
とはいえ、では545eのベストハンドリングな仕様はどれかと問われても、それをはっきり答えるのは難しい。テスト車は、コーナリング時のボディロールが、われわれの好みよりやや大きいし、ロックトウロックが3回転近いステアリングのレスポンスは鋭さがちょっと足りない。
絶対的なグリップレベルとコーナリング中のシャシーバランスはともによく、スピードが出ていても車体の位置極めに自信が持てる。ところが、ランフラットタイヤでは柔軟性が足りず、荷重が大きくなっても十分に粘れない。このタイヤでは、ステアリングフィールもインフォメーションに富んだものとはならず、切りはじめの入力に対してやや無感覚なところも出てしまう。
結果として、この545eは速度を上げればバランスがよく、なめらかで有能なクルマなのだが、G30型5シリーズのラインナップでもっとも魅力的な仕様ではなく、運動性能がもっとも優れるモデルにもなっていない。