【安定感<楽しさ】新型三菱アウトランダーPHEV 「よく曲がるSUV」目指したワケ

公開 : 2021.10.28 18:05

アウトランダー・エボも成立?

新型アウトランダーの良く曲がる運転感覚は、同じプラットフォームを使う日産ローグ(2022年に登場する次期エクストレイルの北米仕様)に似たところがある。

新型アウトランダーの運転感覚は、PHEVのメカニズムを生かして三菱が独自にセッティングをおこなったが、プラットフォームの素性に基づく面も小さくないわけだ。

新型三菱アウトランダーPHEV
新型三菱アウトランダーPHEV    三菱

日産によると「コンパクトなノートのプラットフォームは、ルノーが中心に開発したが、新型アウトランダーやローグについては日産が中心に新開発した」と述べている。

それでもドライバー(前席)を中心に車両が旋回していく感覚は、ルノーのクルマづくりに似ている。

とくにアクセルペダルを緩やかに戻して車両の進行方向を内側へ向けられるコントロール性には、奥の深さも感じられ、クルマ好きには歓迎されるだろう。

この素性を備えていれば、かつてのランサーなどのように、スポーティなエボリューションモデルも成立しそうだ。

SUV&電動車なのに運転が楽しい

新型アウトランダーの場合、海外仕様には直列4気筒2.5Lのノーマルエンジンも用意するが、日本仕様はプラグインハイブリッドのPHEVのみだ。

いわゆる電動車だが、前述のとおりドライバーの運転する楽しさを追求した奥の深い運転感覚を実現させている。

新型三菱アウトランダーPHEV
新型三菱アウトランダーPHEV    花村英典

このクルマづくりの方針は、エンジンを搭載しない純粋な電気自動車を含め、今後さらに電動車が増える過程で大切な意味を持つ。

昨今はクルマが電動化されると運転する楽しさが失われるといった誤解を招く論調も増えているからだ。

アウトランダーPHEVは、従来型から運転の楽しい電動車を表現してきた。この傾向をさらに加速させるのが新型とも受け取られる。

そして逆説めいた表現だが、全高が1800mmを超えるSUVであることも、運転の楽しさを盛り上げる。

低重心のクーペやセダンでは、カーブを曲がる時のボディの傾き方も小さいが、高重心のSUVでは少し大きめに傾く。

この挙動変化を穏やかに進行させて、運転の楽しさに結び付けているからだ。

新型アウトランダーでは、床下に配置されたリチウムイオン電池、モーターによる4WDで得られた綿密な四輪駆動制御なども、背の高さとあわせてセダンやワゴン以上に操る楽しさを実感させる秘訣になっている。

三菱は1980年代から1990年代には、SUVのカテゴリーに独自の技術を組み合わせて、優れた悪路走破力を誇った。

ダカール・ラリーなど、モータースポーツでの活躍もその実力を物語る。

そして今後の三菱は、従来と同じくSUVのカテゴリーを貫きながら、電動化時代の優れた安定性と走る楽しさを追求していく。

それを象徴するのが、安定性よりも操る楽しさを前面に押し出した新型アウトランダーの運転感覚といえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。
  • 編集

    上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

三菱アウトランダー(3代目)最新情報の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事