ホームビルド・スポーツカー 後編 バックラーにオースチン、トルネード ほか
公開 : 2021.11.20 07:06 更新 : 2022.08.08 07:21
フェアソープ・エレクトロン(オーナー:デイブ・バムステッド)
ドン・ベネット氏は、キットカー市場へ早期に参入した第二次大戦時代のパイロット。残念ながら彼の製品は、ベーシックで完成度が低かった。だが当時の価格は425ポンドからと安く、多くのオーナーが完成にこぎつけている。
初期のフェアソープ・エレクトロンには、バイク用エンジンを載せた人もいたという。後に販売されたゼータでは、全長2700mmもないシャシーに、フォード・ゼファー用の直列6気筒エンジンが前提となっていた。
エレクトロンは2シーターだが車内は広い。安全への意識が低かった時代なら、トランスミッション・トンネルにクッションを置き、子どもを座らせることも可能だったという。
多く売れたフェアソープが、安価なエレクトロン・マイナー。デイブ・バムステッド氏は8年前に乗り捨てられた状態で購入し、ベネットが夢見たような、高品質な状態に仕上げている。
ボディは艷やかなメタリックブルー。白いインテリアと、ブルーのシートベルトでコーディネートしてある。ボンネットを開くと、エンジンブロックやロッカーカバーも鮮やかなブルーに塗られていた。
フェアソープ社はエレクトロンを、より水準の高いキットカーだと主張していたが、他にはない強い個性はスペシャル・モデル的。オーナーによる工夫が求められる点でも、通じている。
デロウMkI(オーナー:スティーブ・ストラット)
バーミンガムの南、アルブチャーチでケン・デリングポール氏とロン・ロウ氏によって創業された、デロウ社。初期のモデルはA型フレームのシャシーに、1172ccのフォード社製サイドバルブ・エンジンと駆動系を搭載し、通常の量産車として販売された。
当時人気の高かったトライアルレース用のスポーツカーとして設計され、公道での走行にも向いており、200台以上が作られている。フロントアクスルが独立懸架式ではなかったのは、悪路走行に向いていると考えられたためだ。
ボディにドアが付いたのは、MkIIになってから。オプションとして。
現オーナーのスティーブ・ストラット氏は、6歳の時にトライアル・レースへ参加。デロウの助手席に座った体験は、忘れられないものとなった。
しかしスティーブ自身がMkI用のシャシーと部品を揃えられたのは、2003年になってから。エンジンはフォード100E用のアングリア・ユニット。アルミヘッドが組まれ、フォード用のリアアクスルはコイルスプリングが支えている。
このMkIで特徴といえるのが、「フィドル」と呼ばれるブレーキ。ハンドブレーキの1つで、前輪を制動するには前に、後輪を制動するには後ろにレバーを倒す必要がある。滑りやすい坂を登る場面では、便利なブレーキではある。