【試乗】新型トヨタ・アクアG 先代との大きな違い 浮かぶトヨタの想い

公開 : 2021.10.28 19:05

ドライバビリティ、進化が明らか

そんなパワートレインは、まずドライバビリティ面での進化が明らかだ。

従来型はどこまでいっても燃費重視で、そのためドライバーのアクセル操作に対して反応が鈍いという印象を拭えなかった。

新型トヨタ・アクアの場合、アクセルを踏むとリニアにクルマが反応し、ドライバーの意図したとおりの加速がこなせるだけでなく、音やエンジン回転とのリニアな関係といった加速感がよくなり加速が爽快になった。
新型トヨタアクアの場合、アクセルを踏むとリニアにクルマが反応し、ドライバーの意図したとおりの加速がこなせるだけでなく、音やエンジン回転とのリニアな関係といった加速感がよくなり加速が爽快になった。

しかしそこに関して新型は激変。

アクセルを踏むとリニアにクルマが反応し、ドライバーの意図したとおりの加速がこなせるだけでなく、音やエンジン回転とのリニアな関係といった加速感がよくなり加速が爽快になった。

進化幅は大きい。

同時に感じたのは、エンジンを止めたまま走る「モーター走行範囲」の拡大だ。

従来型はモーターだけで発進したあと比較的早いタイミングでエンジンが始動したが、新型では50km/h付近までエンジンがかからないこともあってとにかくモーターが粘る印象。

100km/hを超えるような高速走行時でも、アクセルを離した際や一定速で走る状況ではエンジンが止まることもるが、これは従来型では生じなかった。

こういった部分も高速燃費の向上に効いていることを実感する。

ただ、バイポーラ型バッテリーによるフィーリングの違いは、正直なところ体感するのは難しい。

「アクセル操作への応答性が向上し、低速からリニアでスムースな加速が可能になった」とトヨタは説明し、確かに従来型に比べるとそれは実感できるのだが、バッテリーのみならずシステム全体としてその走行性能を生み出していることのほうが強く感じられるからである。

もう1つ、新型アクアでトヨタ初搭載されているのが、走行モードを「POWER+」に入れると作動する「快感ペダル」と呼ぶ仕掛けだ。

従来モデルと立ち位置が変わった

「快感ペダル」は、アクセルオフと同時に回生ブレーキの効きを強め、減速度を高める仕掛けだ。ちょっとした減速などでアクセルとブレーキの踏み変えを減らせる。

その作動は実になめらか。強い減速感はなく、自然な感覚を追求しているのがわかる。

新型トヨタ・アクアの気になる燃費は、燃費走行を全く意識しなかった今回の試乗でも市街地走行では簡単に20km/Lに届き、高速道路では25km/Lを超えた。
新型トヨタ・アクアの気になる燃費は、燃費走行を全く意識しなかった今回の試乗でも市街地走行では簡単に20km/Lに届き、高速道路では25km/Lを超えた。

完全停止まではしないが、個人的には常に作動することを選びたい。

いっぽう「感覚に合わない」というのであれば標準の走行モードなら作動しないから、使わなければいいだけだ。

気になる燃費は、燃費走行を全く意識しなかった今回の試乗でも市街地走行では簡単に20km/Lに届き、高速道路では25km/Lを超えた。ただし、ヤリス・ハイブリッドには届かない印象だ。

さて、新型アクアはどんなクルマか? 数日間乗って得た結論は、従来モデルとは立ち位置が違うということだ。

従来は燃費スペシャルだったが、新型は後席居住性を高めたことでファミリーユーザーにもオススメできるようになった。

むしろ、ヤリスよりも実用性が高いので、日本におけるトヨタのハッチバックのコンパクトカーとしてはメインストリームとなったと考えられる。

燃費性能はヤリス・ハイブリッドに譲るものの、従来よりももっともっと多くの人に推奨できるコンパクトカーに生まれ変わった。

その変化は、世界戦略車だった先代から新型では実質的な日本専用車となったことも大きいのかもしれない。

より日本のユーザーに特化した商品企画になっているのだ。

最後に、新型アクアで志の高さを感じたのはAC100Vのアクセサリーコンセントの全車標準装備化だ。

1500Wもの大電力を供給できるこの機能はオプション設定だと4万円程度するが、全車に標準で組み込んでいるのである。

その背景にあるのは「停電時や災害時に人々に役立ってほしい」というトヨタの想い。

メーカーオプションだと装着率が高くならないが、万が一に備えて多くのクルマに装着しておいてほしい、ということなのだ。

立ち位置が変化しても、社会の役に立ちたい、という願いは先代も新型もしっかり筋が通っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

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