ポルシェ718ボクスター GTS 長期テスト(1) 911 GT3と比較

公開 : 2021.11.07 09:45

軽快で質感の良い乗り心地と静かな車内

適切な表現ではないかもしれないが、911 GT3ツーリング・パッケージの後に乗る718ボクスター GTSは、マツダMX-5(ロードスター)へ近く感じられる。ネットリとした乗り心地も、英国の道路環境へ感心するほど順応している。

タイトなサスペンション設定は、鮮烈なレスポンスを生んでくれるが、過度な緊張感で案外すぐに疲れてしまう。911 GT3でもそうだ。

ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)
ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)

通常のボクスターより車高が20mm低いGTSの足まわりは、素晴らしい塩梅だといえる。軽快でありながら、質感の良い乗り心地をバランスさせている。

予想外だったのが、6速MTの変速時の重み付けが丁度良く、操作の楽しさがGT3より上だったこと。ソフトトップを閉めていても、走行中は車内が静かだという点もうれしい。

エンジンサウンドは、911 GT3ツーリング・パッケージの圧勝。フラット6が9000rpmまで高まっていく音響は、フェラーリのV12やランボルギーニのV10を持ってこなければ太刀打ちできないだろう。

とはいえ、718ケイマン GTSやボクスター・スパイダーにも搭載される4.0Lフラット6のサウンドが悪いわけではない。個性的で特別な体験を生んでくれる。

通常の911カレラに搭載される3.0Lユニットからターボを外し、ボアとストロークを変えて排気量を増やしたようなユニットではある。チタン製の部品が追加されていたり、特殊なスロットルボディも与えられていない。

だが、アイドリング時のゴロゴロという唸り声は、中回転域にかけてボリュームが増し、6000rpmへ接近するほど吸気音が強く重なってくる。甘美で力強い。

4.0Lフラット6は最高のユニットの1つ

最大トルクは42.9kg-mああり、GT3ツーリング・パッケージと比べると4.9kg-mほど弱いだけ。さらに発生回転域は1000rpmも低い。英国で10万ポンド(1550万円)以下で買えるエンジンとしては、最高のユニットの1つだと思う。

小さなボディに、素晴らしい大排気量エンジンが載っている。718ボクスター GTSの第一印象は、ジュニア・スーパーカーと呼べる領域にある、という内容でまとめることができるだろう。

ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)
ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)

さて、この718ボクスター GTSには約1万ポンド(155万円)ぶんのオプションが搭載されている。代表的なものとしては、アルカンターラ・インテリアとカーマイン・レッド塗装など。

結果として、英国価格は7万5860ポンド(1175万円)に届いていた。ベースの911カレラが約8万5000ポンド(1317万円)で買えることを考えれば、なかなかの値段だ。だが実際は、カレラでも多くのオプションを載せてしまうはず。

妥当な金額だとはいえるだろう。オプションによって、魅力度も高められているとも思う。だが、完璧なパッケージとはいえないかもしれない。この続きは、次回とさせていただこう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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