新ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ発表 日産eパワーと勝負 「eスマート・ハイブリッド」の可能性

公開 : 2021.11.02 05:45

広がる? 「手の内化」想定

筆者を含む記者らとの質疑応答の中で、新設計したロングストロークの直列3気筒1.2Lエンジン(WA-VE型)とハイブリッド関連の電動系パーツのコストに関する質問に対して、ハイブリッド技術担当エンジニアが「将来的に(販売されるモデルの)数がまとまれば、(段階的に)ダイハツとして手の内化していく」という表現をした。

一般的に自動車業界で「手の内化(てのうちか)」とは、自社技術として十分な知見を得て多様なモデル(車種)での展開をすることを指す。

トヨタ・ライズ
トヨタライズ    トヨタ

そのため、前述のようなトヨタの小型車や中型車でのeスマート・ハイブリッドの横展開は「十分にあり得る」と考えるのが自然だろう。

事実、新ロッキー/新ライズのeスマート・ハイブリッドのシステムでは、車体前部の1.2Lエンジン(発電機)に軽量でコンパクトなハイブリッド用トランスアクスルが搭載されているが、その内部で並列配置しているモーターとジェネレーターは、トヨタの量産車との共通性が高いことを明らかにした。

また、リチウムイオン二次電池はトヨタが自社製品向けで開発した部品との共通性がある。

そのほか、ハイブリッド機構を制御するPCU(パワーコントロールユニット)についてもトヨタ関連部品をベースにダイハツ向けに改良したという。

要するに……。

新たな心臓 軽への展開は?

プリウスを筆頭とするトヨタハイブリッドシステム、RAV4などで展開するプラグインハイブリッド車、スバルとの協業を含めたbZシリーズなどのEV(電気自動車)、ミライが先陣を切る燃料電池車、そして今回のダイハツ主導で開発したシリーズハイブリッド(eスマート・ハイブリッド)と、トヨタ全体としてのカーボンニュートラルに向けた電動化フルラインナップ体制がより鮮明に見える化されたといえる。

もう1点、気になるのは軽自動車の電動化だ。

ダイハツ・ロッキー(ハイブリットモデル)
ダイハツ・ロッキー(ハイブリットモデル)    ダイハツ

政府の施策「グリーン成長戦略」では、2035年までに軽自動車を含めて国内の新車は100%電動化(ハイブリッド車を含む)としているからだ。 

今回の商品説明で新ロッキー/新ライズの開発総責任者からは、できるだけ早い時期に「軽自動車への展開」を進めるとの発言もあった。

ただし、これは新ロッキー/新ライズで今回用いたシリーズハイブリッド技術を、現行の軽自動車エンジン規定の排気量660ccに当てはめて導入する、という意味ではないようだ。

あくまでも、eスマート・ハイブリッド量産の知見を、軽の電動化にも応用/活用していくという見解である。

いずれにしても、今後クルマの電動化が進むうえで、ダイハツ/トヨタがシリーズハイブリッドに本気になったことは、ユーザーと各社販売店にとって大きなインパクトだといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

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