ゲームが自動車業界に革命を呼ぶ! Unreal Engineを活用する自動車メーカー メタバースの到来

公開 : 2021.11.02 18:25

現実と仮想空間を組み合わせた自動車体験

次の段階は、この技術をクルマのHMIに使用することだ。煩雑なレンダリングに頼らず、HMIデザイナーが3Dグラフィックを直接操作することで、プロセスが大幅に短縮され、イメージ通りの仕上がりになる。

この方法でHMIを作成したのは、ゼネラル・モーターズが初めて(新型ハマーEVで)だ。技術が発展すれば、メタバースがクルマの中に入ってくることも考えられる。現実と仮想現実の違いという点では明らかな課題があるが、車内の環境や体験が誰も想像できないほど変化する可能性もある。

ダイムラーはUnreal Engineを使用して世界中のスタッフと情報を共有しているという。
ダイムラーはUnreal Engineを使用して世界中のスタッフと情報を共有しているという。

こうした商業的な側面によって、技術の進歩が加速していくだろう。Epic Games社はサポートを有料化しているが、Unreal Engineの入手と使用は無料だ。製品の販売収益が一定の基準を超えた場合にのみパーセンテージを受け取る。

「わたし達は、開発におけるソフトウェアの使用を収益化していません」とウォルフ氏は説明する。「当社の創業者でありCEOのティム・スウィーニーは、ディベロッパーとプログラマーを生業としていますが、クリエイターの時点でマネタイズすることは間違っていると感じています」

「人々が成功するためのツールを提供し、その成功をマネタイズするための何らかの仕組みを見つけることが大切だと考えています。それがゲームで起きていることなのです」

自動車業界では、Epic Games社はメタバースの実現が収益に繋がると期待している。つまり、Unreal Engineにより構築されたメタバース上で、顧客がクルマを選び、試乗し、購入すると、自動的にコミッションが適用されるというものだ。

大胆な計画だが、自動車業界にかつてないほどの大きな変革をもたらす可能性があり、メーカーと顧客の両方が恩恵を受けることになるだろう。

フェラーリとオンラインゲーム

フェラーリ296 GTBは、Epic Games社がUnreal Engineで制作した世界最大級のオンラインゲーム「Fortnite(フォートナイト)」に登場した。同ゲーム内で実在するクルマが起用されるのは初めてだ。

フェラーリは、2017年からUnreal Engineを使って、296 GTBのコンフィギュレーターやウェブサイトに掲載されているPVなどを制作してきた。オムニチャネルと呼ばれる方法をとっているので、どの面に興味を持っても同じ体験が得られ、身近で使いやすいなものになっている。

フェラーリ296 GTBのコンフィギュレーター
フェラーリ296 GTBのコンフィギュレーター

フェラーリはすぐに、映像制作におけるゲーム用エンジンの可能性に気づいた。296 GTBの発表映像では、巨大なLEDバックスクリーンを使用して、制作チームが思い描く風景の中にクルマを配置した。参考画像をベースに、老舗のソフトウェアCinema 4Dを使ってプレビューを作成。

その後、Unreal Engineを使用して、画像のライティング、シェーディング、テクスチャを開発し、Ultra Dynamic Sky、Advanced Water MaterialなどのプラグインとBlueprint Scripting Systemを使用して、Disguiseという別のデジタル・プロダクションシステムと連携させた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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