メルセデス・ベンツとBMW 同じようで違う? EVの戦略・売り方の工夫

公開 : 2021.11.03 21:10  更新 : 2021.12.13 21:17

メルセデスとBMW。ともにEVシフトを進めていますが、そこには相違点も。戦略の違い、日本市場へのアプローチ方法を比べます。

メルセデス 市場環境が許す限りEVに

舞台をフランクフルトからミュンヘンに移して、IAAモビリティと呼ばれるドイツのモーターショーが9月に開催された。

コロナ禍ということもあり開催期間は6日間、入場者数は40万人に留まったが、地元ドイツの自動車メーカーは多くのニューモデルを出展。ほぼすべてがEVであり、たしかにエンジンショーではなくモーターショーになっていた。

同じ方向に舵を切ったようで、よく見ると異なるドイツの両雄のEVシフト。画像は、BMW iXとメルセデス・ベンツEQE。
同じ方向に舵を切ったようで、よく見ると異なるドイツの両雄のEVシフト。画像は、BMW iXメルセデス・ベンツEQE

その中からここではメルセデス・ベンツとBMW、プレミアムブランドの両雄の主要車種を紹介しながら、彼らのEVシフトの共通点・相違点などを見ていきたい。

メルセデスは開幕前日にプレイベントを開催し、オンライン配信もされた。

冒頭ではEVファーストからEVオンリーへと加速していくことを宣言し、2025年までに3つの新しいEV専用アーキテクチャを導入予定で、2台に1台は電動化とすることを目標に掲げた。

そして2030年までに“市場環境が許す限り”、すべての新型車をEVにする準備が整う予定ともアナウンスした。

前半の威勢の良さに比べると、後半の歯切れの悪さが気になった。

EVに力を入れるのに、2台に1台は電動化という表現に留めていたり、市場環境が許す限り準備が整う予定としていたり、かつては「最善か無か」という強烈なスローガンを掲げたこのブランドらしからぬ表現が目立つ。

欧州委員会は今年7月、2035年にすべての新車乗用車をゼロエミッションにすると発表しているが、メーカー側は完全なEV化は難しいと考えているのかもしれない。とはいえ欧州委員会に正面から反論することもできないためか、ワールドプレミア・モデルの多くがEVという力の入れようだった。

BMW EV専用車でメルセデスに先行

具体的にはEクラスに相当するEV専用車であるEQEをはじめ、すでに発表されているEQSのAMG版であるメルセデスAMG EQS 53 4マティック+、GクラスのEV版として2025年頃に市販予定というコンセプトEQGを世界初公開した。

本拠地ミュンヘンでのモーターショー開催となったBMWは、ショー開幕日に日本で発表会を開催した。

IAAモビリティの期間に、日本で報道向けに披露されたBMW iX xドライブ40。
IAAモビリティの期間に、日本で報道向けに披露されたBMW iX xドライブ40。    AUTOCAR JAPAN編集部

そこでは今年日本でも販売を開始するEV専用車iXをお披露目するとともに、欧州ではすでに発表されているiX3およびi4を、日本でも来年導入予定とアナウンスした。

ここで両ブランドのEVラインナップをもう一度おさらいしておくと、導入が早かったのはBMWで、2013年に発表したEV専用車i3を、PHV(プラグインハイブリッド車)のスポーツカーi8とともに発表しており、iXはEV専用車としては第2弾となる。

メルセデスの市販EVは2019発売のEQCが最初で、エンジン車のGLCとプラットフォームを共有している。第2弾として今年日本に導入されたEQAも似たような成り立ちだ。
 
メルセデスを擁するダイムラーはこれ以外にマイバッハとスマート、BMWはロールス・ロイスとミニというブランドを持っている。

このうちスマートとミニはどちらもEV専用ブランドに特化することが発表済みで、ロールス・ロイス以外はIAAでコンセプトカーを発表しているが、ここではメルセデスとBMWに絞って話を進めていくことにする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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