ジャガーXExBMW M235ixアウディS3 同価格帯スポーツサルーン 3台比較 後編
公開 : 2021.11.13 09:46
300ps前後の2.0Lエンジンに四輪駆動。ジャガーXEと同価格帯にある競合2台を英国編集部が比較。互いの魅力を探ります。
もくじ
ーサイズの割に車内は広くないジャガーXE
ーパワーで勝るアウディとBMW
ー高い精度と自然なバランスを両立
ーXEで増えるであろうジャガー・ファン
ージャガーXE BMW M235i アウディS3 3台のスペック
サイズの割に車内は広くないジャガーXE
ジャガーXEはマイナーチェンジを経て、最新のピヴィ・プロと呼ばれるインフォテインメント・システムを獲得している。タッチモニターのサイズはXFほど大きくないが、操作しやすい位置にあり、スマートフォンとのミラーリングにも標準で対応する。
車内空間のゆとりでは、BMW M235i グランクーペが優勢。リアシートはこの3台で最も広く、乗り降りしやすい。180cmを超える大人でも、快適に長距離移動できそうだ。
アウディS3 サルーンのリアシートは、頭上も足もとまわりも、このクラスとして平均点どまり。大人が日常的に乗る場所ではなく、10代前半までの子どもの場所といえる。
ジャガーXEの全長は2台より150mmも長いことを考えると、車内空間は期待値以下。フォルムの都合でリアドアの開口部は小さく、リアシートに大人が乗り込む場合は体を丸める必要がある。運転席も着座位置が若干低いものの、包まれ感も強い。
この3台で、運転席に一番余裕を感じるのはBMW 2シリーズ。とはいえ、190cm近い身長の筆者だが、XEやS3でも充分に快適な体勢を取ることはできる。
動的能力では、モデル内でのスポーツ番長を務める、BMW M235iやアウディS3が有利といえるだろうか。ペック表をご覧いただければわかるが、確かにこの2台には有利な数字が並んでいる。
他方、ジャガーXEはエンジンの搭載位置だけでなく、シャシー全体の重心高も低い。フロントエンジン・リアドライブという特性を活かし、操縦性は3台で最も甘美ではある。
パワーで勝るアウディとBMW
最高出力は、XEより車重の軽いドイツ勢2台が310psで並び、ジャガーに勝る。パワーウエイトレシオで見ると、明らかな差がある。加えてBMWは最大トルクが45.8kg-mと一番高く、ひときわたくましく感じられる。
BMWというブランドへ期待するとおり、今回の3台で最も訴求力の高いエンジンを搭載していたのは M235i。発進直後から生み出されるパワーも、中間加速での鋭さでも、群を抜いていると感じるほど。
ワインディングで3台を交互に乗り比べてみるが、M235iが最もコーナーからの脱出が鋭く、平均速度も高い。ジャガーよりレスポンシブで、中回転域での力強さも上。積極的に回ってもくれる。ただし張り詰めた感じや粘り強さでは、今ひとつではある。
それに迫るのが、アウディS3 サルーン。パワーデリバリーのリニアさでも、ジャガーのインジニウム・ユニットより優れている。アクセルペダルへの反応は比べれば柔らかく、サウンドや吹け上がりでもBMWには及ばないが、S3は充分に速い。
ドライブモードをスポーツにすると、人工的なノイズが車内に響いてくるが、これは評価が分かれそうだ。筆者には少しわざとらしく聞こえ、オフにしたいと感じた。グリップ限界などを探るべく手や足の操作に集中していれば、気にはならなくなるけれど。
この人工的な音は、ダイナミック・モードを筆者が選びたくない理由にもなっていた。出色のグリップ力やタイトな姿勢制御、粘り強く奥の深いシャシー性能などを考えるほど、シリアスなS3には必要ないものだと思う。