1960年式ダッジ・ポラーラ 最先端だったテールフィンのフルサイズ 後編
公開 : 2021.11.27 07:06
クライスラーで活躍した、デザイナーのエクスナー氏。フォワード・ルックの代表作を英国編集部がご紹介します。
もくじ
ー映画に登場する宇宙船のような雰囲気
ー6277ccのV8エンジンに3速AT
ー1962年にまったく新しいポラーラへ交代
ーアメリカにおけるカーデザイン黄金時代
ーダッジ・ポラーラ(1960年/北米仕様)のスペック
映画に登場する宇宙船のような雰囲気
1960年式のダッジ・ポラーラ。スピードメーターは横長のストリップ・タイプだ。クロームメッキのフレームに収まるパネルは文字が抜かれ、半透明のガラスを通じて、裏側から柔らかく光が灯る。当時の映画に登場する、宇宙船のような雰囲気がある。
フロントバンパーの造形を反復させたXのスポークで支える大胆なステアリングホイールは、姉妹モデルのマタドールではオプションだったが、ポラーラなら標準装備。リムには、フレークが混ざった半透明の部分が上下にある。
スペースエイジ感を高めているのが、スピードメーター手前に突き出た円柱形の時計。ガラスの中に、時と分で回転するシリンダーが付いている。
「購入時点で時計は装備されていませんでした。でも、欲しいと思って大金を費やして探したんです」。とオーナーのクリス・メンラッド氏が笑う。この時代のクルマに特別な思い入れを持つ、彼らしい。
「1000ドル払っています。希少な部品ですが、ジョージア州のクライスラー部品を扱うモーパー・ショップに、箱入りの状態であったんです」
「時計のガラスケースの上部に小さな傷があり、返品されたものかも。寒くなると止まるので、リビルドの必要がありそうです。古い部品は問題なく何年も動く時もあれば、気難しい時もあります」
話を伺っている途中も、時計は時々動くのを止めた。「高価でしたが、その価値があると思っています。時計が付いているポラーラは、他に見たことがありません。このクルマ専用で、2年しか作られていませんでしたからね」
6277ccのV8エンジンに3速AT
1950年代末、ショールームでスポットライトを浴びていたのは、真新しいダッジ・ダートとマタドール、そしてこのポラーラだった。前オーナーのレヴィ夫人もディーラーを訪れた時、ダッジに変化が訪れたと感じたのではないだろうか。
デザイナーのヴァージル・エクスナー氏によって1957年から展開された、「フォワード・ルック」と呼ばれるスタイリング。ポラーラの場合、見た目だけでなく中身もまったくの新設計だった。
エンジンは共有するモデルもあったが、それ以前のダッジ・コロネットやロイヤルとの共通点は殆どない。ダッジはボディ別体のシャシー構造ではなく、モノコックの原型となる、ユニボディ構造を採用。新しいモデル・ラインナップを構築した。
「ボディとフレームは、要塞のように強固に一体となっています」。と当時の広告では誇らしげに主張している。
トーションビーム式のサスペンションをフロント側に取り入れ、先進的なイメージを牽引。クリスが所有するポラーラのように、パワーウインドウやエアコンまで、現代的な快適装備もくまなく装備が可能だった。1950年代末に。
さらにポラーラの中心的存在といえたのが、383cu.in、6277ccという大排気量のV型8気筒エンジン。トルクフライトと呼ばれた、クライスラー社製の3速ATが組み合わされている。
ドライブをレバーで選択し、アクセルペダルを踏めば、アメリカンなV8エンジンらしいたくましさで、巨大なボディを推し進める。