なぜ? 黒基調の自動車ディーラー増えたワケ 黒を採用する/しない ねらいは
公開 : 2021.11.07 05:45 更新 : 2021.11.07 08:42
三菱「SUVの力強さ」表現
2018年からブラック基調のディーラー店舗を展開する三菱も、まずディーラー店舗デザインのビジュアルアイデンティティを変更したことについて、「お客さまに三菱自動車がどういうアイデンティティを持った会社かを認識してもらうために、お客さまとの接点である店舗デザインを刷新することを決定した」と説明。
「元々のコーポレートカラーからブラック、ホワイト、レッドを継承し、シルバーの代わりにセカンダリーカラーとして3色の明度の違うグレーを設定した」という(三菱自動車広報部商品広報グループ田中氏)。
そして、店舗の外観にブランドアイコンとしてのブラックを採用した理由については、「SUVの三菱をイメージさせるための力強さや逞しさ、またこれから必要となる品質の高さを表現する為」と説明する。
さらに、そのイメージを強調する為に、『ダイナミックスロープ』と呼ばれる斜めの構造体を、店舗アイコンとして追加。
白い水平のラインとレッドの斜めのラインを、夜間も光るようにすることで、象徴的に訴求するデザインとなっている。
なお、ブラックベースの背景にレッドのスリーダイヤとホワイトの「MITSUBISHI MOTORS」の文字を店舗サインに採用した理由については、「時間を問わず、一貫してコーポレートアイデンティティの印象を統一するため」とのこだわりだ。
2016年から、ジープのディーラー店舗にブラック基調のデザインを採用するFCAジャパンも、「同ブランドが近年、ディーラーネットワークやブランドの認知度、販売成功率を大幅に向上させていることを受け、その勢いをサポートするために、新たなショールームデザインを開発した」と説明。
「新しいアプローチでは、あらゆる環境に暮らすさまざまな顧客の要望に対応できるショッピング体験を尊重できるショールームとして、実用性やシンプルさ、実現可能性に焦点を当てたものとした」という(FCジャパン広報部長清水氏)
このように、同じブラック基調の店舗でも、それぞれブランドごとのこだわりを持ってデザインされているのである。
ホンダ 独自カラーで印象づけ
では、ブラック基調の流れに乗らず、独自カラーでの店舗デザインを展開するメーカーは、どのような想いを持っているのだろうか。
2020年よりブラックを採り入れながらも、独自カラーでの店舗デザインを展開するホンダは、「2006年に販売チャネルを一本化した際に、店舗イメージを白基調に刷新。そこから10年以上を経て、ユーザーにホンダカーズ=白というイメージを定着させることに成功し、清潔/安心/明るいというポジティブな印象を持ってもらえた」と説明する。
一方で、「ユーザーの持つ価値観の変化や競合他社の店舗デザインの強化、労働人口の減少による従業員の定着率の重要性が高まっていることなどにより、新技術を導入することでの商品やサービスへの対応が必要となっている現状を考えると、店舗も大きく進化することが必須となっているとの結論に至った」という(ホンダ広報部)。
そこで、同社のイメージカラーであるホワイトとレッドを踏襲した形で、店舗デザインを進化させた答えが、現在の店舗デザインなのだ。
「他社が採用しているブラックを、その流行の流れに乗ろうという意味合いではなくダークグレーとして採り入れながらも、独自のカラーを大切にするという想いで新デザインを考案。HDCというデザインが、全国の同社ディーラー店舗で展開されている」としているという。
そんな新デザインは白基調でありながら、ダークなグレーで全体を囲んだようなデザインとなっているのだが、「この濃いグレーで囲むというデザインは、正面に大きく配置されたレッドのロゴと白い壁面がより際立つ組み合わせである」と説明。
さらに、「ファサード以下の部分と店舗の内装にはウッド調の素材を採用することで、親しみと居心地の良さを演出し、敷居を下げることで入りやすさの向上を目指した」と、ホンダはあくまで高級車メーカーではなく、幅広いラインナップを取り扱うメーカーであることへのこだわりを強調した。