フェラーリSF90ストラダーレ 詳細データテスト 記録的な速さ 物足りない限界域でのハンドリング

公開 : 2021.11.13 20:25  更新 : 2021.11.14 06:41

フェラーリ初の量産PHEVは、オートカーのロードテスト史に残る速さを記録しました。しかし、サーキットレベルのハンドリングは、ハイブリッドでないミドシップの跳ね馬ほど楽しめませんでした。今後の改良が期待されます。

はじめに

自動車業界の時流である電動化の観点からすれば、今回テストするフェラーリSF90ストラダーレはもっとも重要なモデルだと思えるだろう。というのも、これはさまざまなスーパーカーを生み出してきた世界屈指のスーパーカーメーカーが、はじめて造り上げた量産PHEVなのだから。

たしかに、そう考えるのは正しい。しかし、このクルマは単に社会的風潮に合わせて、自動車メーカーとしての責任やサステナビリティに配慮した最新ミドシップフェラーリ、という枠組みだけでは括れない、もっと野心的なモデルだ。

テスト車:フェラーリSF90ストラダーレ
テスト車:フェラーリSF90ストラダーレ    LUC LACEY

間違いないのは、これが過去30年にわたってマラネロのクルマ造りを縛ってきた技術的規範を、全面的に書き換えようとしているモデルであること。斬新な電動化技術を用いて、期待以上の動力性能を生無のはもちろん、エミッション規制をクリアするのも狙いだ。

そればかりでなく、内燃エンジンのフェラーリを今後10年以上生き長らえさせる使命も帯びている。その仕事ぶりは、GPSを用いた正確な計測で明らかにしていくことにしよう。

SF90はスーパーカーのパラダイムシフトだ、というのがフェラーリの主張だ。それも、さまざまな点で極端な。しかも、少量生産のコレクターズアイテムやスペシャルなイメージリーダーではなく、継続的に生産されるカタログモデルとして用意された。

このクルマはフェラーリにとって、通常ラインナップの頂点に君臨する初のV8モデルである。また、FFやGTC4ルッソといったグランドツアラーを除く本格スポーツカーでは、マラネロ史上初の4WDを採用した。

さらにいうなら、跳ね馬を掲げるブランドが変革のときを迎える中で、このSF90は誕生した。1999年登場の360モデナにはじまり、2019年発売のF8トリブートで絶頂に達したV8ミドシップモデルは、まもなく退役する。その座を受け継ぐのは、全面新開発された296GTBに端を発するV6ハイブリッドモデルとなる模様だ。

つまりわれわれは、世界でも最大級の敬意を集める自動車メーカーの、電動化への転換期に立ち会っている。それがどのようなものになるのか、探っていこうではないか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

フェラーリSF90ストラダーレ試乗の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×