ベントレーS1コンチネンタル・ジェームス・ヤング4ドア レストアで第二の人生 前編

公開 : 2021.12.04 07:05

新車時よりボディパネルの収まりが良い

敷地に置かれた輸送用コンテナの中で、真夏の暑い時期にリースは何時間も過ごした。ドアを仕上げるトリムは、どこを探しても見つからなかったと、リースが振り返る。

「特別な道具を作って自作も考えました。でも、その見積もりが4万4000ポンド(682万円)で諦めました」

ベントレーS1コンチネンタル・ジェームズ・ヤング4ドア(1957〜1959年/英国仕様)
ベントレーS1コンチネンタル・ジェームズ・ヤング4ドア(1957〜1959年/英国仕様)

ステンレスを用いた機械製造に携わっていた経験上、特殊な部品を探すことには慣れていたらしい。「ネットで1日検索し、石膏ボードの仕上げ部材に辿り着いたんです」

「部材の1つが、ベントレーに必要な部品の形とまったく同じだったんです。2本購入し、長さを合わせて加工したら、ボディにピッタリ。見た目はオリジナルと違わず、価格は約30ポンド(4700円)。ウォレンダーは本当に驚いていました」

S1コンチネンタルの品質が極めて高いことを、リースは作業を進めるなかで理解した。「すべてが、幾つかの層に分かれて組まれています。1つの層を仕上げなければ、次の層へは進めません」

「ドア関係の部品だけでも数100本ものビスで固定され、分解するのに数時間は必要なほど。リビルドでは、この水準を維持することを重視しました。リアのドアだけでも、14回も脱着を繰り返していますが」

「100%満足とはいえません。作業を手伝ってくれたエイドリアンは、うんざりした様子でしたね。仕上がったボディをウォレンダーが見て、ジェームズ・ヤングのファクトリーを出た時よりパネルの収まりが良いと話してくれました。うれしかったですよ」

再利用可能な内装はすべてクリーニング

リアウインドウ周辺を構成する木材は朽ちており、挑戦的な仕事になったという。「見事な技術を持った職人、アヤヴェンが大きな助けになりました。博物館で馬車の修復に関わっていて、技術的に通じていたんです」

「彼とは、インテリアの木製部品も一緒に再制作しましたが、作業を楽しんでくれたようです。オリジナルの誤差の大きさには驚きました。職人が手作りしたためですね。1日で数個の部品を作れる時もあれば、1個に丸1日を費やす時もありました」

ベントレーS1コンチネンタル・ジェームズ・ヤング4ドア(1957〜1959年/英国仕様)
ベントレーS1コンチネンタル・ジェームズ・ヤング4ドア(1957〜1959年/英国仕様)

難しい作業を振り返るリースだが、部品は着実に復元されていった。「最終的な組み立て時に、作業の良し悪しがわかります。すべてがきれいに収まり、仕事が正しかったと実感しました」

「塗装の仕上がったボディパネルの取り付け位置を理解するのにも、時間がかかりましたね。まったく見当の付かないパネルが1枚あり、ウォレンダーに3度も電話しました。結局、関係ない彼のランドローバーの部品だったんです」

困難だった作業の1つに、熱戦入りのリアウインドウがあった。「以前の修復で、コネクターが折れていたんです。特殊な電導性のエポキシ樹脂を探し出し、慎重に接着し直しています。ちゃんと機能し、見た目もわかりません」

カーペットや天井の内張りなど、オリジナルの内装で再利用可能なものは、すべてクリーニングしクルマへ戻された。どうしても使えない部品は、ブランドを得意とする専門業者に頼ったそうだ。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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