ヒュンダイ・ジェネシス3.8
公開 : 2014.05.14 22:50 更新 : 2021.03.05 21:39
■どんなクルマ?
今年の初旬にアメリカでデビューしたヒュンダイ・ジェネシスは、今夏にはイギリスにもわずかながら輸入される予定となっている。
2008年にデビューした先代モデルと比較して大幅な改善が施されたこのモデルは、価格に対してたくさんの装備が用意されるものの、4輪駆動や右ハンドルの設定はない。またこれらの致命的な欠点を二流のシャシーとインテリアのディテールで補うことはとてもじゃないけれど難しい。
ヒュンダイのプレゼンテーションを聞く限り、初代ジェネシスのボディの強度不足は受け止めざるを得ない事実として痛感しているようだ。したがって、メルセデス・ベンツ・EクラスやBMW 5シリーズに匹敵する強度を達成するために高張力鋼板を多用し、ボディ・パネルは接着接合を行った。またシャシー部門はロータスのエンジニアを雇うことにより巻き返しを図っている。インテリアの質感は先代よりかは改善され、4輪駆動はいくつかの市場ではオプション選択が可能だ。
興味深いことに、ヒュンダイはジェネシスの設計に取り掛かる前に、ワーキング・ホリデー制度を利用してエンジニアをヨーロッパへ送ったということだ。彼らは一流ホテルとミシュラン・ガイドお墨付きのレストランを堪能したようだ。また彼らはモンブランのペンやロレックスの時計を自らの高級車づくりの指針としているのである。
■どんな感じ?
静かで上品であり間違いなくEクラスより、更には活発なXFよりもむしろ良い。少なくともスムーズな路面においては。
しかし、荒れた路面では落ち着きを失い、大きなくぼみを乗り越える度にリア・サスペンションは破綻する。ステアリングはリニアであるものの感触は薄く、メルセデスのお家芸ともいえる直進安定性がこのヒュンダイにはない。シャシーのもつ基本特性は優れており、自然かつスムーズな印象で、高速コーナリング時のアンダーステアを抑える立ち直りの速さに優れるだけに非常に残念な結果だ。もっとも、ヨーロッパに輸入されるジェネシスにはハンドリングの抱える問題を解決するサスペンション・チューニングが施されることが既に決定済みとなっている。
われわれがテストしたのはイギリスに輸入予定の8速ATと3.8ℓV6ガソリン・エンジンが組み合わされた後輪駆動のモデルだ。エンジンは力強さがあり、よほどアクセルを踏み込まない限りは洗練した走りが可能である上、BMW 535iとくらべて10%ほど燃費を削減している。ただし、5シリーズのターボ・エンジンと比較して低速の押出しは控えめだ。
ディーゼル・エンジンのモデルを用意していないことを考慮すれば、ここ英国では年に20から30台程度の売上しか期待していないのだと思わずに入られない。
ヒュンダイは、サプライヤーとの信頼関係をより強固なものにし、結果として各スイッチ類の感触は非常に首尾一貫性をもつに至った。テストした車両に用意された16箇所を調整可能な豪華なレザー・シートは至極快適で後部座席もまた素晴らしい。
センター・コンソールにある大型の720p HDディスプレイはスマートフォンと同等の操作感をもつタッチ・スクリーンとi Driveのようなコントローラー双方から操作可能。エアコンに備わるCO2センサーには運転手の居眠りや疲労感を削減する機能も備わる。
概してインテリアは良好。ただし玉に瑕なのは、いかにもプラスチッキーなトリムと、強情なヘッドレスト、そして少しばかり手に負えない点数の多いスイッチ類である。
■「買い」か?
右ハンドル・モデルの追加や多数の技術を盛り込んだ豪華なインテリア、安全装備を盛り込むことが、韓国製の自動車が英国でも受け入れてもらえるようになるための最低条件だと考える。
またサスペンションの改善も急務であり、これらの問題が解決されるのであれば、数ある個性的な高級サルーンの一員として認められることも可能だ。さらには、実力のあるディーゼル・エンジンを盛り込まない限り、ヒュンダイの野望であるクラス唯一のベスト・サルーンなる称号を手にすることが遥か彼方の夢物語に散る結果となることは避けられないだろう。
(マーク・ヌーデルーズ)
ヒュンダイ・ジェネシス3.8
価格 | £40,000(688万円) |
最高速度 | 241km/h |
0-100km/h加速 | 6.4秒 |
燃費 | 12.4km/ℓ |
CO2排出量 | 195g/km |
乾燥重量 | 1877kg |
エンジン | V型6気筒3778cc |
最高出力 | 315ps/6000rpm |
最大トルク | 40.5kg-m/5000rpm |
ギアボックス | 8速オートマティック |