アルピーヌA110 リネージGTへ試乗 標準シャシーに292psの限定 ベストA110

公開 : 2021.11.26 08:25

長距離ドライブの親和性や快適性

アルピーヌA110のしなやかで素直なシャシーは、古いフランス車で味わう体験とは異なる。ポルシェ並みの減衰力特性は獲得していないものの、スポーツカーらしい硬さもある。また管理の悪い英国の一般道でも、不快さを感じることもない。

クルマとの意思疎通のしやすさというべきか、一体感では、A110を超えられるのはケータハムくらいだろう。それでいて、長距離ドライブへの親和性や快適性は、遥かに高い。普通のハッチバックと同じくらい車内は居心地が良いし、乗り降りもしやすい。

アルピーヌA110 リネージGT(英国仕様)
アルピーヌA110 リネージGT(英国仕様)

シートは柔らかく身体をしっかり支えてくれる。調整域も広い。高速域でのノイズは小さく、余計な疲労を生むこともない。

リネージGTで数少ない気になる部分が、インテリアの質感や装備。レザーシートは心地良いし、高音質なステレオも付いてはいるが、価格を正当化できるほどではないかもしれない。

カーボンの装飾トリムで飾られているとしても、ルノーの量産モデルと共通する部品を隠し切ることは難しい。インフォテインメント・システムは、アップル・カープレイやアンドロイド・オートにも非対応。現代水準では、少し残念な内容だ。

アルピーヌA110は、インテリアやデジタル装備で選ぶようなクルマではないとは思う。だが、6万4807ポンド(約998万円)という試乗車の英国価格を目の当たりにすると、引っ掛かることは確かだろう。

いま選ぶべきアルピーヌA110

このリネージGTは、現在購入できるベストのアルピーヌA110だと、筆者は断言できる。そして、最も値段が張るA110でもある。

台数限定の特別仕様車として、プレミアムが乗った価格ではあるだろう。約1万5000ポンド(約231万円)安いA110 ピュアでも、同等に楽しめるのではないか、と勘ぐってしまう気持ちもなくはない。だが、恐らくそんなことはない。

アルピーヌA110 リネージGT(英国仕様)
アルピーヌA110 リネージGT(英国仕様)

A110 Sと比べれば、3400ポンド(約52万円)ほどの差になる。より柔らかいサスペンションなどを組み合わせた対価と考えればいい。

充分な予算があるなら、いま選ぶべきアルピーヌA110は、リネージGTだ。とはいえ、より安価なA110を選んだとしても、恐らく後悔することはないとも思うけれど。

アルピーヌA110 リネージGT(英国仕様)のスペック

英国価格:6万1655ポンド(約949万円)
全長:4205mm
全幅:1800mm
全高:1250mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃費:14.3km/L
CO2排出量:153-158g/km
車両重量:1134kg
パワートレイン:直列4気筒1798ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/6400rpm
最大トルク:32.5kg-m/2000-6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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