新型トヨタGR86 欧州仕様プロトタイプへ初試乗 称賛の予兆 後編
公開 : 2021.11.21 08:26
2代目へ一新した、トヨタの手頃なスポーツクーペ。向上したトルクと操縦性のバランスを、英国編集部は評価します。
シャシー全体を味わえる太いトルク
2代目へモデルチェンジした、トヨタGR86。初代のGT86は、現代のスポーツカーとしては速いとまではいえなかった。しかしそれには、普段の道でスピードを高めずとも運転を楽しめるという、明確な目的が与えられていた。
新しい2.4Lエンジンは中回転域から増強されたトルクを湧出するが、パワーアップしたといっても、0-100km/h加速を1秒縮めた程度。高ぶる気持ちに合わせて走らせたいなら、エンジンをしっかり回す必要がある。スポーツカーとして、あるべき姿のままだ。
同時に、肉付きの良いトルクカーブを獲得したことで、一般道での動的特性や扱いやすさに明確な違いが生まれている。コーナーが連続する区間では、従来ほど選ぶギアに悩む必要はなくなった。
3速に入れたまま、3500rpmからでも力強い加速を引き出せる。もちろん、2速なら5000rpmから一層熱意あるパンチも得られる。
左手と左足への注意力が減るぶん、サスペンションやステアリングなど、シャシー全体を味わうことへ意識を向かわせることができる。加えてGT86よりGR86は、20kgも軽い。
トヨタによれば、サスペンションを引き締めたことで、動的特性にも変化が及んでいるという。高張力鋼板をモノコックに採用し、補強材を追加することで、GT86比でねじり剛性は50%ほど高くなってもいる。
スプリングだけでなく、アンチロールバーやブッシュ類も硬さを増した。強度を高めたシャシーだからこそ、タイトなサスペンションを組み合わせることが許される。乗り心地を犠牲にすることなく。
直感的で自然で、クイックなステアリング
タイヤは、欧州仕様のエントリーグレードには、17インチのアルミホイールにミシュラン・プライマシーが組まれる。トヨタ・プリウスと同じタイヤだ。上級グレードは、18インチのミシュラン・パイロットスポーツ4を履く。
今回、筆者がトヨタGR86の欧州仕様プロトタイプの試乗を許されたのは、スペイン・バルセロナ郊外に広がるカーブが続くエリア。処理しきれないような場面もなくはなかったが、ほぼ見事にサスペンションはルートをいなしてくれた。
俊敏性と横方向の姿勢制御が向上したことは明確。速度域の高いコーナーへ意欲的に侵入していくだけでなく、グリップ力も目に見えて良くなった。先代より安全で、成熟された印象を受ける。
面白みが減じたような表現に読めるかもしれないが、そんなことはない。グリップ力の限界を探るには、確かにGT86より積極的な運転が求められる。とはいえ、違いは僅か。ドライバーが従来以上に加熱する必要はない。
ステアリングホイールの操舵感はGT86より重く、反応はクイック。直感的でもあり、自然な印象であることにも変わりはない。サーキットに持ち込み、GR86のテールがスライドし始めても、そのコントロールは容易だ。
先代のGT86は、コーナーでアクセルペダルを踏み込んだままカウンターステアを当てれば、信じられないほど穏やかなドリフトを許してくれた。2代目でも、その小気味よさは不変なようだ。