フィアット128xフォルクスワーゲン・ゴルフMk8 元祖と定番の前輪駆動 前編
公開 : 2021.11.27 09:45
フェラーリの技術者によるエンジン
エンジンとトランスミッションが横置きされる都合で、左右のドライブシャフトの長さを変える必要があった。しかし長さが異なると、加速時にステアリングへ影響が出る、トルクステアが生じてしまう。
そこでジアコーサはシャフトの太さを調整。左右で直径を変えることでねじり剛性を等しくし、トルクステアを低減させている。
さらにエンジンルーム内に充分な空間を確保するため、フロント・サスペンションにはマクファーソンストラット式を採用。ストラットとロワー・ウイッシュボーンはリア・サスペンションと共通とした。
リアには、フロントより大きなリーフスプリングを横方向にマウント。アンチロールバーとしての機能も持たせてある。
こんな先進的なフィアット128を、かのエンツォ・フェラーリ氏は普段の足として乗っていたとか。128が発売された1969年、フェラーリはフィアット傘下となったという時系列も興味深い。
フェラーリとフィアットとの関係性でいえば、1950年代から1960年代にかけてフェラーリのF1マシンを手掛けた技術者、アウレリオ・ランプレディ氏も128にとって重要な役割を果たしている。
128に搭載された1116cc直列4気筒エンジンは、ランプレディによるもの。高回転型でオーバースクエア構造の、堅牢なユニットが開発された。これにも、現在へ通じる多くの技術的特徴が盛り込まれている。
完成されていたパッケージング
今となってはシングル・オーバーヘッドカム、SOHCは一般的な構造だが、1969年当時は先進的といえた技術の1つ。パワー特性に優れ、複数の最高出力の設定が与えられた。排気量も、モデル末期までに40%ほど拡大できる余裕もあった。
タイミングチェーンではなく、タイミングベルトを用いていたことも特色。耐久性は短くなったものの、洗練された回転フィールを叶えている。
加えてフロント側にディスクブレーキが組まれ、ステアリングには精度に優れたラックアンドピニオン式を採用。完成されたパッケージングとして、現在のコンパクトモデルの多くにも見られる組み合わせだといえる。
すっかりメカニズムの説明が長くなってしまったが、ピピンレッドに塗られたフィアット128と、鮮やかなイエローが眩しい8代目フォルクスワーゲン・ゴルフの2台を並べた。ちなみにこの128は、筆者が所有しているクルマだ。
フェイスリフト後の1977年式で、1300ccのエンジンが載っている。父は1970年に初期型を購入し、気に入ったのかこのクルマへ乗り換えている。それ以来、ずっと筆者の一家が維持してきた。
同時に、少なくない数のフォルクスワーゲン・ゴルフも、筆者の元へやってきた。ゴルフはモデルチェンジを重ね、最新版を今でも楽しむことができる。だが、128は約40年前に消滅してしまった。いずれにしろ、どちらのクルマもリスペクトしている。
この続きは後編にて。