ポルシェ・ミッションRコンセプトへ試乗 1100ps 純EVのケイマンが透ける 前編
公開 : 2021.11.29 08:25 更新 : 2022.08.08 07:20
ポルシェ製電動スポーツカーの将来像を具現化した、ミッションR。英国編集部が貴重な試作モデルに試乗しました。
走行モデルの価値は10億円以上
ポルシェによる45分の説明会が事前に開かれた。貴重な純EVのレーシングカーへ試乗する数日前に。もしダッシュボードのライトがすべて赤く染まったら、何よりもまず、急いでクルマから降りる必要があるという。
いくつかの脱出方法が説明されたが、緊急時には、身体でクルマと地面へ同時に触れてはならないという。このクルマには、電圧900Vで電気が流れている。急ぐだけでなく、細心の注意が必要なのだ。
今回試乗させていただいたのは、ポルシェ・ミッションRコンセプト。2021年9月のミュンヘン・モーターショーで展示されたものと、まったく同じ車両だという。
別に展示する目的で作られた、モックアップと呼ばれる実物大の模型もある。実際に走行可能なミッションRは唯一、これだけ。もう1台、別のミッションRをポルシェが制作する予定はないという。
コンセプトカーだから、販売価格は付けられていない。非公式ながら、約800万ユーロ(約10億4000万円)の価値があるらしい。
とんでもない価値のあるクルマなのに、筆者は耐火性のレーシングスーツを着て、ヘルメットを被っている。アメリカ・ロサンゼルスのポルシェ・エクスペリエンス・センター内にある、サーキットで走らせるために。
初めに、助手席へ座ってデモ走行を体験した。コース脇のランオフエリアは殆どなく、もしコースオフすれば、ほぼクラッシュにつながるようだ。
大部分は専用開発 911 RSRの部品も流用
筆者がステアリングホイールを握る前に、このポルシェ・ミッションRコンセプトについて簡単にご説明しよう。
ポルシェは常に、新たなコンセプトカーを生み出す際、非常に広い視野や明確な目的を持って計画を進める。このミッションRは、ポルシェ初の純EVスポーツカーを体現する目的で作られた。
プロジェクトの開始時は718ケイマンをベースとしていたそうだが、9月に完成した頃には、ごく一部しか共通部分は残っていなかったという。ミッションRの大部分が、専用に開発されている。
筆者は2023年か2024年に姿を表すであろう、次期型のケイマンが採用するプラットフォームをベースにしているのでは、と想像していたが違ったらしい。ミッションRのプロジェクト・マネージャーを務めた、ミヒャエル・ベーア氏は次のように説明している。
「両車のサイズはとても近いといえます。実際、ミッションRと次期ケイマンのホイールベースは、1mmしか違いません。しかし、それはミッションRが完成して初めて気付いたこと。完全に偶然なのです」
パワートレインはまったく異なるが、ル・マン・レーサーの911 RSRからも多くの部品を譲り受けている。リアアクスルやフロント・サスペンション、高機能なステアリングホイールなどは、911 RSRのもの。だが、リア・サスペンションは特注だという。