ポルシェ718ボクスター GTS(3) 長期テスト 長距離旅行との抜群の相性
公開 : 2021.12.04 09:45 更新 : 2022.08.08 07:20
小さなボディの想像以上に荷物も詰める
前回は特に2速のギア比がロングだという指摘をしたが、今回は英国や日本にはない環境で、ギア比を確かめることもできた。ドイツ南部、バイエルン州に伸びるアウトバーンには、速度制限のない区間があるのだ。
この条件なら、エンジンの能力をすべて開放できる。2速だけでなく、4速や5速でも、7800rpmのレッドラインまで使い切れる。スピードメーターの針を、260km/h近くまで傾け、聞き惚れるような美声とともにGTSの本能に迫れた。
反面、アルプス山脈の風光明媚なモン・スニ峠を越えるワインディングでは、シャシーの能力を発揮させるべく、低いギアを活用した。ここでは、2速がロング過ぎる印象のままだった。
718ボクスター GTSは、基本的には素晴らしい。ステアリングホイールの重み付けだけでなく、キャスター効果が生む直進性とのバランスも完璧。リアタイヤの挙動も漸進的だ。
アクセルペダルの角度で、フロントノーズが切れ込んでいく勢いも調整できる。巡航走行が得意なだけでなく、カーブの連続するような区間でも楽しい。見事な二面性といえる。
荷室容量も不足はない。大人2名の、18日間分の荷物を積むことができた。リアとフロントのトランクを使えば、さほど妥協することなく、持っていきたいモノを載せられる。ただし、ハードケースより布のバッグの方が良いだろう。
車内の小物入れは不足気味で、カップホルダーも少々使いにくい。でも、コンパクトな718ボクスターには、驚くほど多くの荷物を積むことができる。
GTSの絶妙なバランス
今回の旅行で引っ掛かったのが、インフォテインメント・システムだ。大きすぎない画面は良いのだが、ソフトウエアが少々古い。反応も遅く、アンドロイド・オートに対応していないのも惜しい。
不満はその程度。小ぶりなボディは、中世の面影が残る市街地でも扱いやすい。992型ポルシェ991では、気を使うことだろう。控えめな存在感もうれしい。クルマで長距離旅行を純粋に楽しみたい時、乗るクルマの存在感は強過ぎない方が良い。
718ボクスターなら、派手過ぎるモデルのように、地元の人から眉をひそめられることもない。縦列駐車で少し手間取っても、目の前のオープンカフェで楽しんでいる人々に迷惑をかける心配もない。
GTSのバランスは絶妙。知らない人が見れば、小さなポルシェだろう。価格は安くはないが、高過ぎることもないと、多くの人は想像できるはず。
これまにでも、グランドツアラーのアルピナB4 SやトヨタGRスープラで、似たようなルートを旅をしたことがある。その時も、とても幸せな時間だった。
アルピナのゴージャスな雰囲気や、GRスープラの長いボンネットが生む個性はないものの、718ボクスター GTSの快適性は2台に引けを取らない。さらにクルマとの一体感では、遥か上にある。
イタリアの太陽が迎えてくれれば、ソフトトップを開け放って走ることもできる。そんな体験は、718ボクスター GTSだからこそ、といっていい。
テストデータ
気に入っているトコロ
コンパクトなボディで好燃費:718ボクスター GTSにも、気筒休止機能が付いている。どれほどの効果があるのかは不明だが、高速巡航での燃費は11.7km/L程度。65Lの燃料タンクで、640km以上走れる計算になる。
気に入らないトコロ
気筒休止機能のノイズ:GTSは、通常の718ボクスターよりエンジンの遮音性が低い。気筒休止機能が働くと、低速域では明確にノイズでわかる。それが少々実務的。
価格
モデル名:ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)
新車価格:6万6340ポンド(約1028万円)
テスト車の価格:7万5860ポンド(約1175万円)
テストの記録
燃費:9.7km/L
故障:なし
出費:12ポンド(約1800円/エンジンオイル)