秋のサイドウェイトロフィー2021 現地レポート 突然の異空間に迷い込む
公開 : 2021.11.30 11:50
袖ヶ浦FRWでおこなわれたフェスティバル・オブ・サイドウェイトロフィー2021秋開催の現地レポートです。
タイムスリップ? 突然の異空間
袖ヶ浦フォレストレースウェイ(FRW)のパドックに続くトンネルを抜けると、1960年代にタイムスリップしたような光景が広がる。
初めてサイドウェイトロフィー(SWT)を目の当たりにしたゲストは「自分の格好はこれで大丈夫なのだろうか?」と少し不安になる。
レーシングの場であるにもかかわらず、そこにはジャケットとタイ、そしてハンチングキャップ等で身なりを整えたエントラントが多いからだ。
メカニックは白いオーバーオール。ドライバーのレーシングスーツも往年の雰囲気に合ったシンプルなものが多い。
フェスティバル・オブ・サイドウェイトロフィーは年に2回、ツイード・ジャケットが心地よい春と秋に開催されている。
このイベントを手短に説明するならば、1969年までに製造された英国車を中心としたヒストリックカーによるレースということになる。
だが実際のイベントは、ドライバーのみならずパドックに集う人たちが、古いクルマと往年のレースを、空気感も含めて再現しようする試み。
言わばヒストリックカーを使った奥深い遊びなのである。
4輪と2輪、さらにサイドカーも
今回のSWTは、このところの新型コロナウイルス事情を反映したのか、春のレースよりも参加台数が増えていた。
パドックで仲間とともにピクニックテーブルを出し優雅にランチを楽しむような人の数も多く、以前の賑やかさが戻ってきた感もあった。
4輪のみならず、クラシックバイクやサイドカーのレースが併催される点もSWTの特徴といえる。
袖ヶ浦FRWのピットエリアのちょうど半分ほどをクラシックバイクが埋め尽くし、甲高い特徴的な排気音を奏でていた。
パドックでは和やかに、しかしヘルメットをかぶればドライバーの表情は真剣そのもの。一旦コースインしてしまえばプロもアマチュアもない。そこにあるのはモーターレーシングの世界なのである。
だから限界を飛び越えてスピンするクルマもあれば、煙を吐いてスローダウンしてしまうクルマもある。
午前中に練習走行と予選をこなし、昼過ぎからは決勝レースがはじまる。4輪の最初のレースはすっかりSWTの名物となった感のある2ドライバーによる耐久レース、セブリング40mトロフィーだった。
「サイドウェイ」も辞さない走り
セブリング40mトロフィーのスタートは2ndドライバーがコースを横断し、クルマに乗り込んだドライバーにタッチしてからスタートを切る変則ルマン式となる。
各々の参加車両は排気量をはじめとして性能差が大きい。このため各車両はドライバー交代のタイミングで主催者が決めたハンディタイムを消化する必要がある。
つまりレース前半は少し間延びした展開になることもあるが、ドライバー交代の後はフィニッシュに向けて各車の差が縮まり接戦となる。
今回もトップを走る排気量僅か1L弱のオースチン・ヒーレー・スプライトを、4L近いジャガーEタイプが猛追。最後は3秒差まで迫りサーキット中の視線をくぎ付けにしたのだった。
また最後におこなわれたスポーツカーによるエバーグリーンカップでは、耐久レース以上の盛り上がりを見せた。
2位を走る田中選手がサイドウェイ(横滑り)も辞さない猛烈な走りでトップを追い回し、ラストラップまでレースを盛り上げたのである。
パドックの景色は、ともすればコスプレ的にも見えるSWTだが、レースでは必ずと言っていいほど好バトルが見られる。
ホッとして、しかし熱くなる。こんなメリハリこそが、この一風変わったレース・イベントが根強い人気を誇る理由なのである。