ホンダHR−V 詳細データテスト 質感や経済性は良好 シャシーは優秀 パワートレインは力不足

公開 : 2021.12.04 20:25  更新 : 2021.12.17 17:19

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

このHR−Vのハンドリングについていうべきことは、山ほどある、というわけではない。ハンドリングの成功よりも短所が取り沙汰されることの多いカテゴリーのクルマとしては、それはむしろいいことかもしれない。

その信頼感は明らかに、ホンダの狙い通りだ。公正を期して評価しても、これはきわめて頼りになるクルマだといえる。

一貫性があり、ほどよく、予測しやすいレスポンスが、このクルマのダイナミクスのキーになっている。一般的なクロスオーバーのオーナーの嗜好にはあっているだろうが、エンスージアストを喜ばせるものではない。
一貫性があり、ほどよく、予測しやすいレスポンスが、このクルマのダイナミクスのキーになっている。一般的なクロスオーバーのオーナーの嗜好にはあっているだろうが、エンスージアストを喜ばせるものではない。    JOHN BRADSHAW

軽めのステアリングは、決してナーバスに感じることなく、それでいてその切り立ったノーズをまずまず正確にターンインさせるのが難しくないようなギア比に設定されている。絶望的に鈍い、というものではない。コーナリングフォースの増減に合わせて手応えが上下するところはあり、積極的に楽しめるとはいえないものの、操舵にある程度は自信をもたらしてくれる。

もうひとつのうれしいサプライズは、背が高いクロスオーバーの多くよりスプリングレートが明らかに低くおおらかなのに、不快なピッチやロールが出ないこと。むしろ、ロールレートはステアリングのギア比にうまくマッチしている。そのため、ハンドリングは俊敏というより、フロント優勢で重ためなのだが、B級道路をそれなりのペースで破綻なく飛ばせるのだ。

たしかに、速度を上げて、それを維持するには、スロットルペダルを床まで踏みっぱなしにしなくてはならない。しかし、それさえしていれば、シャシーはたいていの道路状況へみごとに対処してみせる。

そうであっても、残念ながらドライビングが楽しいクルマではない。その点ではライバル、とりわけCX−30のほうが満足度は高い。HR−Vの長所はエンターテインメント性ではなく、落ち着いた走りにある。グリップは上々で、突き上げは吸収してくれるが、インフォメーションを十分に伝えてくれることはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。

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