ヴォワザンC27 エアロスポーツ 壮観なアールデコ・スタイル 1台限りのクーペ 後編

公開 : 2021.12.18 07:06

クリス・バングル氏も仕上がりを評価

とあるヴォワザン・コレクターも、C25 エアロダインのレストア時に、モックが再生産させた内装材でインテリアを仕立ている。完成した4シーターは2011年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスでお披露目され、ベスト・オブ・ショーを獲得している。

C27 エアロスポーツの完成には2年を要した。成果を祝うべく、モックはヴォワザンの飛行機が展示されるフランスのル・ブルジェ航空宇宙博物館でのお披露目会を計画したものの、博物館の許可は得られなかったそうだ。残念にも。

ヴォワザンC27 エアロスポーツ(1934年)
ヴォワザンC27 エアロスポーツ(1934年)

モック自身はコンクール・デレガンスでの受賞を狙ったわけではないと話すが、素晴らしいC27 エアロスポーツには多くの機会が訪れた。「ハイライトとなったのは、フランス西部のラボールで開かれたコンクールでしたね」

「審査員には、BMWのデザイナーだったクリス・バングル氏も含まれていました。スタイリングやディティールについて、素晴らしい会話をすることができました。クリスはとても関心を寄せてくれ、モダンなクルマだと話していましたよ」

モックは2010年までC27 エアロスポーツのオーナーだったが、C28 エアロスポーツのレストア・プロジェクトに向けた資金捻出のため、売却を決める。ヴォワザン最高のロードカーとして評価される、流線型のグランドツアラーだ。

多くの人に喜びを与える貴重なヴォワザン

売りに出たC27 エアロスポーツは、カリフォルニアのクラシックカー・コレクター、ピーター・マリン氏が購入。壮大なコレクションの1台に加わった。ヴォワザンC3 ストラスブールなどと並ぶように。

2021年9月、C27 エアロスポーツは英国で開かれるコンクール・デレガンス出展のために、10年ぶりに大西洋を渡ってきた。ロンドン南西部のハンプトン・コート宮殿で開かれたイベントでは、見事に参加者投票での優勝を勝ち取っている。

ヴォワザンC27 エアロスポーツ(1934年)
ヴォワザンC27 エアロスポーツ(1934年)

遅れて会場に到着したピーターの妻、メルル・マリン氏は、その結果をサプライズで知らされ涙したそうだ。「夫は多くの人に喜びを与えるため、素晴らしいクルマを披露することを楽しんでいるんです」

夫人のメルルが、ハンプトンコートでの公開プレゼンテーションで、誇らしげに話した。ヴォワザンC27 エアロスポーツのドアを開いて。

これまで、ヴォワザンは個人のコレクションであることが多く、人の目に触れる機会は限られていた。しかし、モックもマリンも、ガブリエル・ヴォワザンの作品をわれわれに伝えるべく、多くの努力を惜しまない。

壮大な、という表現がピッタリのヴォワザンC27 エアロスポーツは、カリフォルニア・オックスナードのマリン自動車博物館で公開されている。世界で唯一であろうヴォワザンの展示エリアで、11台のコレクションに加わり、来場者の心を奪っているに違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ミック・ウォルシュ

    Mick Walsh

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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