キングスレー・カーズ ULEZレンジローバー・クラシックへ試乗 本物を現代的に 後編
公開 : 2021.12.08 08:26 更新 : 2022.04.14 16:59
見事な技術で再生された、初代レンジローバー。安くないものの、本物でモダンな仕上がりを英国編集部は評価します。
もくじ
ー変わらないコマンドスタイルの着座姿勢
ーリビルドした4.6L V8で270ps
ーシンプルに素晴らしい現代化したクラシック
ーキングスレー・カーズ ULEZリボーン・レンジローバー・クラシック(英国仕様)のスペック
変わらないコマンドスタイルの着座姿勢
キングスレー・カーズ社が手掛けた、ULEZレンジローバー・クラシックのドライビングポジションは旧来的。モダンではない。着座位置は高く、足を曲げて背筋を伸ばした体勢でシートに座る。とはいえ、充分に快適だ。
ステアリングホイールは、小型トラックのように大きいものから、小径なものへ交換してある。この改良だけで、人間工学的に優れた現代的な運転環境に感じられる。
それ以外のインテリアは、レンジローバー然としたもの。特に飾り立てたような雰囲気もなく、古くからのレンジローバー・ファンでも気持ちよく過ごせるはず。
SUVとして運転席からの視界は重要だが、素晴らしい。大きなガラスを、細いピラーで支えている。例のコマンドスタイルと呼ぶべき着座姿勢で見晴らしが良く、ボディ四隅の感覚も掴みやすい。
運転で得られる感覚も、レンジローバーそのもの。特徴的だが、適度に近代化されてもいる。ステアリングラックは少しクイックなレシオのものに交換され、トレッドが広げられ、新品のアルミホイールを履いている。
路面のうねりでボディがフワ付いたり、カーブで大きく揺れることもない。落ち着いたロードマナーだ。試乗車に装備されていた、ファストロード・サスペンションも効果的なのだろう。車高が落ちるスプリングに、硬いアンチロールバーが組まれるオプションだ。
グリップ力も高く、コーナリング能力も高められている。実際、想像以上。エレガントでラグジュアリーなレンジローバーのイメージを塗り替えるほど。強く感心させられた。
リビルドした4.6L V8で270ps
乗り心地も優れ、舗装の凹凸を見事に吸収し、ボディは路面から程よく隔離されている。完璧と呼べるほどスムーズに均してくれるわけではないが、標準のレンジローバーと比べれば、接地感や追従性は良い。独特の味わいがある。
高速道路の追い越し車線では、ドアの隙間から風切り音が立つ。スライド式のリアウインドウは、風圧でガタガタと振動する。とはいえ、ULEZレンジローバー・クラシックの日常的な使用を控えよう、と考えるほどではないだろう。
搭載できるエンジンは3種類。どれもが、ローバーの歴史に忠実なV型8気筒で、排気量は4.0Lから5.0Lの範囲で選べる。最高出力は243psから334psの間に設定される。
試乗車が積んでいたのは4.6Lで、真ん中のユニットだった。もちろん、簡単な整備を済ませただけではなく、クランクシャフトにピストン、コンロッド、カムシャフト、バルブ、シリンダーヘッドは新品に置き換えてある。
ルーカス社製の燃料インジェクションや、エグゾースト系も交換済み。最高出力は270ps、最大トルクは42.3kg-mだという。
サウンドは聞き惚れるほど美しい。吸気音にV8エンジンらしい燃焼音が重なる。クルマというより、モーターボートの音のようにも聞こえる。
V8エンジンを載せたレンジローバーの音を忘れてしまったって? このULEZレンジローバー・クラシックに近づけば、思い出せるだろう。機会があれば、だが。
車重は1876kgあるから、270馬力でも、最新の高性能SUVと同等に鋭く加速することは難しい。でも、そんなことは望まないと思う。普通に走るのに充分以上のパワーはある。