ホンダNSXとの惜別 NA1とNA2、NC1 和製スーパーカー3世代を比較 前編

公開 : 2021.12.25 07:05  更新 : 2022.01.19 08:58

2022年に生産終了を迎える予定のホンダNSX。英国編集部が評価を再び高める初代とともに、別れを惜しみました。

量産車初の総アルミニウム・モノコック

※12月25日7時05分公開の当記事内、デザイナーに関する記述に事実と異なる部分が有りました。開発に関わられた方、並びに読者の皆様にお詫びを申し上げると共に、文面を訂正させて頂きます。(AUTOCAR JAPAN)

戦後間もない頃、20世紀中に日本が経済や技術で超大国と呼ばれる地位を築くと考えた人は、どれだけいただろうか。なにしろ、ドイツのアウトバーンをメルセデス・ベンツ300SLが疾走していた1954年、日本には充分な舗装路も存在しなかったのだから。

ホンダNSX レッドの初代NA1型とイエローのNA2型、レッドの2代目NC1型
ホンダNSX レッドの初代NA1型とイエローのNA2型、レッドの2代目NC1型

ランボルギーニが、スーパーカーという言葉を生み出したミウラを発表したのは1966年。その頃でも、日本の自動車メーカーがミドシップの傑作を創出するとは、多くの人が想像しなかっただろう。

しかし、1948年に現在の本田技研工業を創業した本田宗一郎氏は、欧州製モデルと一般道だけでなくサーキットでも渡り合えるクルマを作りたいという、大きな思いを抱いていた。そして1984年、NSXのプロジェクトがスタートする。

ホンダはモータースポーツの最高峰、F1での活動に積極的だった。同時に、フェラーリ308などが人気を集めるスーパーカー市場へも、強い関心が向けられていた。

初代NSXの開発では、当初から高い理想が掲げられていた。世界で初めて、量産車として総アルミニウム・モノコックを採用したことは、それを端的に表している。30年以上前のロータス・エリート・タイプ14級に、画期的な設計を採用していたのだ。

1984年には、日本初の量産ミドシップ・スポーツ、トヨタMR2が発売されている。だがNSXは、ホンダが主張したように、別カテゴリーに属するスーパーカーだった。

4カムにチタン製コンロッド、VTEC

エンジン・コンストラクターとして、ホンダがF1界を牽引していた1980年代。当時のF1の流れを汲むV型12気筒エンジンが、NSXに搭載されるのではないかと考えた人もいたはず。

そんな予想を横目に、技術者がNSXの心臓に選んだのは新開発のV型6気筒エンジンだった。2977ccの排気量に、クワッドカム・ヘッドとチタン製コンロッドを採用。電子的にリミッターを掛けた状態で、8300rpmという高いレブリミットを実現している。

ホンダNSX(初代NA1型/1990〜2005年/英国仕様)
ホンダNSX(初代NA1型/1990〜2005年/英国仕様)

さらにホンダのFFスポーツ、CR-Xに投入されていた先進的な可変バルブタイミング・システム、VTECを搭載。ターボやスーパーチャージャーといった過給器に頼ることなく、リニアで刺激的なパワーデリバリーを可能としていた。

アルミ製のモノコックにNA V6エンジンが組み込まれたのは、栃木県の専用工場。約200名の優れた技術者が選ばれ、NSXは丁寧に仕上げられた。当時のシビックは1台の製造に12時間を要していたが、NSXの製造には、3倍以上の40時間を掛けていたという。

モータースポーツでの活躍というイメージも重なり、高度な技術が与えられたNSXには多くの需要が生まれた。充分な現金を用意できたとしても、ホンダのスーパーカーを手に入れることは、当初は容易ではなかった。

とはいえ、フェラーリ並みに世界中の文化へ強い影響を与えたとまではいえないだろう。北米のテレビドラマ、私立探偵マグナムやマイアミバイスを飾った跳ね馬とは違い、ホンダNSXがテレビ画面に登場する機会は少なかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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