ホンダNSXとの惜別 NA1とNA2、NC1 和製スーパーカー3世代を比較 前編
公開 : 2021.12.25 07:05 更新 : 2022.01.19 08:58
技術に関心を持つ人を惹きつける
しかし、グランツーリスモやニードフォースピードといったテレビゲームの世界では、NSXは強かった。若者が深夜に楽しむサブカルチャーの世界では、大きな存在感を示していた。
若すぎて運転免許を持てない10代前半の心に、レンダリングされた日本製スーパーカーは深く刻まれた。そんな1人が、ジェフ・ドビー氏だ。ホンダに身も心も魅了され、今回ご登場願った見事なNA1型NSXを大切にしている。
マニュアルのトランスミッションに、パワーアシストの付かないステアリングが搭載された、ストイックな仕様だ。走行距離は、もうじき2万6000kmになろうかという浅さだという。
「子供の頃は、それほどNSXが大好きというわけではありませんでした。部屋に貼っていたポスターはフェラーリ。308GTBやベルリネッタ・ボクサー、512BBなど」。と笑顔でドビーが話す。
「グッドウッド・サーキットに近い、英国南部のミッドハーストという街に住んでいた時期がありました。ある日、隣に住む年配の男性がNSXに乗り換えたんですよ。ボディはあちこち凹んでいて、トランクに台車を載せて使っていたりしましたね」
「そのクルマの影響で、興味を持つようになりました。人とは違うクルマが欲しいと思っていたので、その隣人を説得して売ってもらいました。それがNSXの始まりです」
「それから、このクルマに乗り換えています。ステップアップするように。自分のようなクルマ好きや、技術に関心を持つ人を惹きつけるようですね。NSXはとても完成度が高いと思います」
デザインは発表時から注目された
NSXプロジェクトが始まった頃、ホンダからHP-Xというコンセプトカーが発表された。そのスタイリングには、イタリアのピニンファリーナ社が関わっていた。
一方で、量産車としてNSXのデザインをまとめたのは、当時のホンダのデザイン部門。そのスタイリングは、発表時から焦点となる話題の1つだった。
ドビーが話を続ける。「斜め後ろからの見た目は、正直あまり好きではありません。開発時に、リアのトランクを大きくする決定をしました。ホンダらしいといえますが、少し実用的すぎると思います」
「スーパーカーへの判断として良かったのかどうか、今でもわかりません。でも、他とは違うことは確かですね」。そう話しながら、フォーミュラ・レッドに塗られたクルマの鍵を貸してくれた。
ホンダNSXのオーナーの多くは、その魅力を人に知って欲しいと考えている。F-16戦闘機にインスパイアされたという、ルーフがブラックに塗られたコクピットに座る。VTECエンジンは臨戦態勢にある。
張り詰めた緊張感までは感じられないものの、NSXのすべては高度にチューニングされている。自然吸気のV6エンジンは、アクセルペダルの操作に対して瞬間的に反応する。アイドリングからレブリミットまで、漸進的にパワーが高まる。
この続きは中編にて。