ホンダNSXとの惜別 NA1とNA2、NC1 和製スーパーカー3世代を比較 中編
公開 : 2021.12.25 07:06
2022年に生産終了を迎える予定のホンダNSX。英国編集部が評価を再び高める初代とともに、別れを惜しみました。
NSXの走りは常に軽快で機敏
初代ホンダNSXが搭載するV6エンジンには、5800rpmを堺にカムが切り替わるVTECシステムが採用されている。高回転側のカムでは、明確にエグゾーストノートも変化する。加速の鋭さが違和感なく、目に見えて高まる。
レッドライン目掛けて咆哮がクレッシェンドしていく。穏やかに運転している時とはまったく異なるサウンドが、一帯に響く。走りは常に軽快で機敏。それでいて、ペースを速めても安心感は変わらない。
サスペンションは、前後ともにダブルウィッシュボーン式。鍛造アルミニウムを採用することで、バネ下重量を30%も削っているという。
コンプライアンス・ピボットと呼ばれる、角度の変わる支点部品をアームの付け根に採用していることも特長。タイヤへ掛かる負荷を逃し、路面変化へ影響を受けにくい、まとまりのある走りを実現している。
NA1型のNSXは、速度を高めても想像以上にライン取りが容易。前触れなく落ち着きを失うようなこともない。その優れた軽快さと安定性を、1990年に自動車雑誌のホイール誌が端的に記した。
「男っぽさが漂うイタリア製スーパーカーとは違った雰囲気で、素早く走ります。脳と指先で運転するように。フェラーリやランボルギーニのように上腕二頭筋を使って、気張る必要はありません」
1990年に3.0L V6と5速MTで発売が始まったNSXは、月日を重ねるごとに洗練度を高めた。1995年にはタルガトップを備えたNSX-Tが登場。1997年にはMTモデルで排気量が3179ccへ増え、クロスレシオの6速MTが搭載されるようになる。
フェイスリフトで固定式ヘッドライトに
駆動系がアップグレードされたことで、NSXの型式も3.2Lエンジン版はNA1からNA2へ変更。オリジナルのスタイリングを維持したまま、パフォーマンスの向上を果たした。
見た目のリフレッシュが図られたのは、販売が始まってから12年後の2002年。サスペンション・スプリングのレートやタイヤサイズの変更以外、基本的にメカニズムに手は加えられていない。
フロントバンパーのデザインが新しくなり、サイドスカートやリアバンパーまわりも一新。空力特性を向上させ、最高速度は281km/hへ高められた。このフェイスリフトで大きな特徴となるのが、開閉するリトラクタブル・ヘッドライトの廃止だろう。
ヘッドライトを点灯した時、リトラクタブル式では空気抵抗が増えてしまう。ホンダとしては、モータースポーツでの戦いを有利に運ぶためにも、固定式のプロジェクター・ヘッドライトは必要な改良だった。加えて、製造コストでもメリットがあった。
NSXの大ファンだと認めるマイク・ジェームズ氏は、フェイスリフト後のモデルに取り憑かれた1人。走行距離を重ねたイエローのNA2型を購入する機会が訪れた時、逃すことなく掴み取ったと誇らしげに話す。
「自動車メディアの売買欄に掲載されていたんです。かつてF1ドライバーだった人物が8年もオーナーだったNSXで、過走行だと説明されていました」。と、出会いの瞬間をジェームズが振り返る。