ホンダNSXとの惜別 NA1とNA2、NC1 和製スーパーカー3世代を比較 中編

公開 : 2021.12.25 07:06

走行距離30万km超でも快調

NSXは以前から好きでしたから、前オーナーがジェンソン・バトンだろうな、と察知はしていました。イエローでフェイスリフト後のNSXは、英国には1台しかありませんからね」

「バトンの後に医者が購入し、毎日運転していたそうです。彼は走行距離を17万7000kmまで伸ばしました。自分が購入したのは10年前。今の走行距離は、30万kmを超えましたよ」

ホンダNSX(初代NA2型/1997〜2005年/英国仕様)
ホンダNSX(初代NA2型/1997〜2005年/英国仕様)

「英国西部のスウィンドンまで、定期的に運転していた時期もありました。4800km毎にエンジンオイルの交換をしていますが、今まで故障で落胆したことはありません。調子はとても良いですね」

「クラッチは27万kmで交換していますが、それ以外、目立った整備はしていません。ホイールベアリングも、サスペンションのブッシュやアーム類も、まったく交換は不要そうです。エンジンのリビルドも、もちろんしていません」

「エグゾーストは錆びたので、変えてあります。ホンダの純正部品は3000ポンド(約45万円)もするので、社外品のプライド社製を選びましたけどね」

「このクルマの前には、前期のNA1型も所有していました。その走りに、すっかり魅了されたんですよ。自分にとっては夢のクルマ。夢のクルマを手に入れて、実際に頻繁に運転する人は稀でしょうね」

「でも、NSXは想像以上に良かった。完璧でした。今まで色々なクルマを運転しましたが、どれよりもNSXが1番ですね」。と話すジェームズから、キーを預かる。

スーパーカーとして感心するほどの乗り心地

NA1型のNSXと同様に、フェイスリフト後でも運転は喜びに溢れている。速度域を問わず乗り心地は穏やかで、路面の起伏や橋桁の継ぎ目も充分に吸収してくれる。スーパーカーという基準で考えれば、感心するほど。

右足に力を込めると、突然様相が変わる。6000rpmを越えると一層意欲的になり、レッドラインへの接近とともにサウンドが共鳴するように響く。社外マフラーへ交換してあることも理由だろう。

ホンダNSX(初代NA2型/1997〜2005年/英国仕様)
ホンダNSX(初代NA2型/1997〜2005年/英国仕様)

NA1型のレブリミット付近のサウンドは、車内で聞いていた方が気持ち良い。だがジェームズのNA2型は、5kmくらい遠くにいる人まで楽しませることができそうだ。

16年という長いモデルライフを経て初代NSXの製造は2006年に終了するが、翌2007年、ホンダはフロントエンジンのアドバンスド・スポーツカー・コンセプトを発表した。スーパーカーへの関心を失っていないことを、アピールするように。

さらに2012年、V6エンジンを横置きしたNSXコンセプトをお披露目し、次期モデルへの期待を高めた。ホンダのF1レース撤退と同時に、V10エンジンを搭載した公道用モデル、HSV-010の計画がキャンセルされた過去はあったが。

2代目NSXの開発に携わったのは、ホンダのノースアメリカ部門。初代NSXプロジェクトに携わった、3名のエンジニアが在籍していた場所だった。

彼らが開発のベンチマークに選んだのは、アウディR8 V10プラス、ポルシェ911 ターボ、フェラーリ458 イタリアなど。初代NSXの開発には6年が投じられていたが、2代目は図面の制作開始から約3年と、短期間で仕上げられたようだ。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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