ホンダNSXとの惜別 NA1とNA2、NC1 和製スーパーカー3世代を比較 中編
公開 : 2021.12.25 07:06
走行距離30万km超でも快調
「NSXは以前から好きでしたから、前オーナーがジェンソン・バトンだろうな、と察知はしていました。イエローでフェイスリフト後のNSXは、英国には1台しかありませんからね」
「バトンの後に医者が購入し、毎日運転していたそうです。彼は走行距離を17万7000kmまで伸ばしました。自分が購入したのは10年前。今の走行距離は、30万kmを超えましたよ」
「英国西部のスウィンドンまで、定期的に運転していた時期もありました。4800km毎にエンジンオイルの交換をしていますが、今まで故障で落胆したことはありません。調子はとても良いですね」
「クラッチは27万kmで交換していますが、それ以外、目立った整備はしていません。ホイールベアリングも、サスペンションのブッシュやアーム類も、まったく交換は不要そうです。エンジンのリビルドも、もちろんしていません」
「エグゾーストは錆びたので、変えてあります。ホンダの純正部品は3000ポンド(約45万円)もするので、社外品のプライド社製を選びましたけどね」
「このクルマの前には、前期のNA1型も所有していました。その走りに、すっかり魅了されたんですよ。自分にとっては夢のクルマ。夢のクルマを手に入れて、実際に頻繁に運転する人は稀でしょうね」
「でも、NSXは想像以上に良かった。完璧でした。今まで色々なクルマを運転しましたが、どれよりもNSXが1番ですね」。と話すジェームズから、キーを預かる。
スーパーカーとして感心するほどの乗り心地
NA1型のNSXと同様に、フェイスリフト後でも運転は喜びに溢れている。速度域を問わず乗り心地は穏やかで、路面の起伏や橋桁の継ぎ目も充分に吸収してくれる。スーパーカーという基準で考えれば、感心するほど。
右足に力を込めると、突然様相が変わる。6000rpmを越えると一層意欲的になり、レッドラインへの接近とともにサウンドが共鳴するように響く。社外マフラーへ交換してあることも理由だろう。
NA1型のレブリミット付近のサウンドは、車内で聞いていた方が気持ち良い。だがジェームズのNA2型は、5kmくらい遠くにいる人まで楽しませることができそうだ。
16年という長いモデルライフを経て初代NSXの製造は2006年に終了するが、翌2007年、ホンダはフロントエンジンのアドバンスド・スポーツカー・コンセプトを発表した。スーパーカーへの関心を失っていないことを、アピールするように。
さらに2012年、V6エンジンを横置きしたNSXコンセプトをお披露目し、次期モデルへの期待を高めた。ホンダのF1レース撤退と同時に、V10エンジンを搭載した公道用モデル、HSV-010の計画がキャンセルされた過去はあったが。
2代目NSXの開発に携わったのは、ホンダのノースアメリカ部門。初代NSXプロジェクトに携わった、3名のエンジニアが在籍していた場所だった。
彼らが開発のベンチマークに選んだのは、アウディR8 V10プラス、ポルシェ911 ターボ、フェラーリ458 イタリアなど。初代NSXの開発には6年が投じられていたが、2代目は図面の制作開始から約3年と、短期間で仕上げられたようだ。
この続きは後編にて。