ピニンファリーナ・バッティスタへ試乗 4モーターで1902ps 0-300km/h 12秒 後編
公開 : 2021.12.15 08:26
カロッツエリアとして名を馳せたブランドが、純EVハイパーカーを発表。英国編集部が公道で評価しました。
内燃エンジン車では実現できないこと
イタリアの一般道でピニンファリーナ・バッティスタを味わい、タツィオ・ヌボラーリ・サーキットに入場した。1902psを解き放つ時だ。コース長は約2.7kmあり、メインストレートの長さは700mほど。充分な距離はある。
しかし、ロンドン郊外のカート用サーキットでケータハムを走らせた時と同じ感想を抱いた。ストレートが短い。コーナーを脱出すると同時に、ブレーキングポインが迫る。
コーナーリング中の加減速に対する操作は、ほとんどが後手後手。あっという間に時間が過ぎる。それでも運転に惹き込まれ、集中したいと思わせる。
アウトモビリ・ピニンファリーナ社は、内燃エンジンを搭載したクルマでは難しいことを実現することが、純EVハイパーカーのバッティスタでは重要だと話す。金額を正当化するためにも。
リアタイヤに1223psが伝えられるから、それは実現できたといっていい。しかも、2200kgの車重とは思えない能力も獲得している。
重量がかさむ120kWhの駆動用バッテリーは、フロントシートの間とその後ろの低い位置へ、T字形に搭載。優れた重量配分で、息を呑むような俊敏性を備えている。
路上ではハードに感じたサスペンションだが、サーキットでパワーを解き放つと、ソフトに感じられる。コーナーの出口で控えめにアクセルペダルを踏んでも、漸進的にリアタイヤが外へ流れる。
一気に踏み倒せば、リアが横を向こうとする。最初は不安になる勢いながら、慣れると楽しくなってくる。フロントタイヤが679psで引っ張ってくれるが、リアはドリフトマシンのようにハッピーだ。
ミラクルなドライバビリティ
圧倒されるほどの加速以上に、コーナリング能力に息を呑む。バッティスタは、直線番長ではない。
ポルシェやフェラーリといったメーカーの優秀な技術者チームなら、1902psという動力性能を手懐けることも難しくはないだろう。だが、新興ブランドといえるアウトモビリ・ピニンファリーナ社によるバッティスタのドライバビリティも、ミラクルに高い。
ただし、スタビリティ・コントロールと、トルクベクタリング機能はまだ開発段階にあった。設定が完了していないという、回生ブレーキとABSの不具合も一瞬だが体験した。思わず、笑顔が凍りついた瞬間だった。
ピニンファリーナは、バッティスタを象徴するようなサウンド・デザインにも取り組んでいる。加速中には、ヘリコプターが発するような脈打つサウンドが聞こえてくる。かなりイイ感じだった。
価格は現地で198万ユーロ(約2億5740万円)だそうだが、英国でナンバーを取得する場合は諸経費が加わり、200万ポンド(約3億400万円)ほどに膨らむはず。アウトモビリ・ピニンファリーナ社は、その価格のバッティスタを150台売りたいと考えている。
より安価で、スピードが抑えられたクロスオーバー・モデルが、3年後に控えている。その時までに、バッティスタの生産は終了する予定らしい。見込み通りの台数が売れるかどうか、筆者は少し疑わしく感じるが。