ロータス・エリート 初代オーナーは本田宗一郎氏 レストアを終え日本へ 後編

公開 : 2022.01.01 15:05

スーパー95仕様にチューニング

「美しく仕上げられたボディシェルへメカニズムを組み込む作業は、素晴らしい時間です。コンポーネントをオーバーホールした自分たちは、まるで新しいクルマを作っているようでした」

エンジンのリビルドは、英国のピーコック・エンジニアリング社が担当した。オールアルミ製のSOHC直列4気筒1216ccコベントリー・クライマックスFWEユニットを、ファクトリーレーサーのスーパー95仕様にチューニングしてある。

ロータス・エリート・タイプ14(1962年)
ロータス・エリート・タイプ14(1962年)

高圧縮比化とツインSUキャブレターによって、最高出力はノーマルから20psほど高い、96psを獲得。ロータスによるスペシャル・エクイップメント仕様でも、86psだった。

見事に完成したグランプリ・ホワイトのロータス・エリートが、40年ぶりに太陽の日差しを浴びる。美しいボディラインが、眩しく光を反射する。ツインのテールパイプから、荒々しいエグゾーストノートが響く。

活気に溢れたサウンドが、コクピットを充満する。アクセルペダルの小さな動きに、エンジンは鋭い回転数の変化で応えてくれる。

ステアリングホイールは程よく重くタイト。下ろしたてのタイヤのゴムが生む抵抗を感じる。すべてのコンポーネントが真新しい。スプリングにも張りがあり、車高はピンとしている。

この取材から数日後、真っ白なロータス・エリートは日本へ出荷される段取りにある。この記事をお読みいただいている頃には、日本の港へ着いているかもしれない。

見事な復活を遂げ60年ぶりの再開

取材したテストコースには、騒音規制が掛けられていた。貴重な歴史を持つ英国製スポーツカーを、限界領域まで攻め込むことは許されていない。今後の長旅を考えれば、むしろ好都合な条件だったかもしれない。

なにしろ、このロータス・エリートのミニマリストさを最初に味わったのは本田宗一郎氏。しかもサスペンションは、手強いチャップマン・ストラットと呼ばれる独立懸架式を採用している。

ロータス・エリート・タイプ14(1962年)
ロータス・エリート・タイプ14(1962年)

限られた速度域であっても、フェザー級と呼びたいほど軽いエリートの俊敏性を味わえる。FRPモノコックは剛性感が高く、ZF社製の4速MTはサクサクと軽快に次のギアを選べる。

「興味深いアイデアが、サスペンションに展開されていますよね。素晴らしいエンジンとシャシーは忘れられません。少しうるさかったとも思いますが」。と博俊が振り返る。

ブシェルたちのチームが成し遂げたレストアも素晴らしい。宗一郎と博俊が残した過去も刻まれている。ロータス・エリート・タイプ14に施された丁寧なレストア、とひとことで片付けられる内容ではないだろう。

このレストアの最終的な目的は、博俊を笑顔にすることでもある。ロータス・エリートが日本に戻ると、79歳の彼と再開する予定だという。50年以上ぶりに。

少し興奮気味に博俊が話してくれた。「とても美しく仕上がったようですね。かつて事故を起こした時のように、ガレージへこもりっきりになるかもしれません。それが少し心配です」

記事に関わった人々

  • グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロータス・エリート 初代オーナーは本田宗一郎氏 レストアを終え日本への前後関係

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