思い切って運転を楽しめるセブン 170R

2021年のBBDCのノミネート車両には、超軽量なスポーツカーも含まれていた。440kgのケータハム・セブン 170Rは、余分なものがすべて削ぎ落とされている。現在購入できるケータハムで最も軽く、最もシンプルで、繊細なモデルだ。

エンジンは85psという控えめな最高出力を発揮し、タイヤは14インチの155/65と小さい。先祖返りしたクルマともいえる。公道でも、審査員に強い印象を残してくれた。

ケータハム・セブン 170Rとデビッド・ブラウン・ミニ・リマスタード・オセリ・エディション
ケータハム・セブン 170Rとデビッド・ブラウン・ミニ・リマスタード・オセリ・エディション

ディスデイルが、「1950年代のシングルシーターのようです」。と言葉を漏らす。プライヤーが続ける。「古いオースチン・セブン・スペシャルを走らせている感じ」。似たような印象を受けたようだ。

ケーターハムの限定的なパワーとコンパクトさ、高効率という純粋な組み合わせは、唯一無二。サーキットで本当に楽しいと感じるには、かなり積極的な運転が求められる。高くないグリップ力が、その楽しさを引き立てている。

「オーバースピードでコーナーへ侵入すると、セブン 170Rは耐えきれずにリアタイヤのグリップが抜けます。でもクルマに勢いはさほどなく、カウンターステアを当てて少したつとスピードが落ちてしまう」

「だからこそ、思い切って運転を楽しめる。笑顔になれますし、体験として悪くありません」。と、フランケルがケータハムの印象をまとめた。

素晴らしいバランスのアトム 4

2020年のBBDC選手権で優勝した、アリエル・アトム 4も爽快。シャシーは素晴らしく表現豊かで、大パワーを受け止めスタビリティーも高い。

2021年仕様はパワーアップされ、最高出力355ps、最大トルク48.3kg-mを獲得。車重は600kgにも満たないから、かなりパワフルだといっていい。ブースト圧調整のノブをサーキット重視のレベル3に設定し、思い切りアングルシー・サーキットを疾走させた。

BMW M3 コンペティションとアルファ・ロメオ・ジュリア GTAm
BMW M3 コンペティションとアルファ・ロメオジュリア GTAm

アトム 4はシンプルがゆえに、物理の法則の存在も大きい。充足感が高い反面、これほど体力を奪うクルマも少ないだろう。ステアリングはクイックで重いものの、フィードバックが濃い。数周も走れば、腕の筋肉がパンプアップされてくる。

セットアップを好みの状態へ整えると、グリップとスピード、ハンドリングが見事なバランスを見せる。素晴らしい可能性が、ドライバーに与えられる。

さらにオーリンズ社製ダンパーをサファリ・モードに切り替えれば、一般道でまったく別の体験も与えてくれる。アスファルトを滑らかに走破する。アトム 4の素晴らしさは、2021年もそのままだった。

さて、今年はプジョー508 PSE、BMW M3 コンペティション、アルファ・ロメオ・ジュリアGTAmという、3台の高性能4ドアサルーンがノミネートした。価格差は大きく、10万ポンド(約1540万円)以上という値札を英国で下げているモデルもある。

先にフランケルが508 PSEに触れた。「プジョーは、運転好きが選ぶファミリーカーとしての核心に迫ったようですね」。だが、その動的能力には常に制限が掛けられたようでもあった。

トップ3選考の続きは(3)にて。

記事に関わった人々

  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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