ランドローバー・レンジローバー・スポーツHSEダイナミックD300試乗 ディーゼルの最後味わう
公開 : 2021.12.11 05:45
ランドローバー・レンジローバー・スポーツHSEダイナミックD300に試乗。ディーゼル最後の味わいと電動化の風味を堪能。
余命4年のディーゼル+スポーツ
つい先ごろ、5代目となるレンジローバーが発表された。
ということは今回の主役である現行のレンジロ-バー・スポーツに関しても「モデルライフ末期」といえそうだ。
そんな「スポーツ」のラインナップに昨年秋、3L直6ディーゼル 48Vマイルドハイブリッド(MHEV)が追加されている。
車名の末尾にパワートレインの種類と最高出力を示すD300(ディーゼル/300ps)という文字列が加えられた今回の試乗車がそれである。
現行レンジローバースポーツには、このディーゼルMHEV以外に3つのパワートレインが揃っているが、それらはすべてガソリン。
2L直4+48V PHEV、3L直6、そして5L V8スーパーチャージドである。
レンジローバーをよりスポーティに仕立てたモデルがレンジローバー・スポーツなので、「ディーゼルって必要?」という見方もあるはず。
だが車重が2.5t近くあるSUVがスポーティに走るためにはトルクはいくらでも欲しいところ。
実際にエンジンとモーターによる最大トルクの和は71.8kg-mにも達し、これはシリーズ最強の5L V8の値をもわずかに上回るものになる。
風雲急を告げる電動化の未来に向け、2026年までにディーゼルの廃止を宣言しているランドローバー。
つまり最長でも4年の命というディーゼル直6だが、MHEVであることを考えれば、電動化の一環という見方もできる。
ちゃんと「スポーツ」として成立しているか、さっそく試乗してみることにしよう。
シリーズ最後のカンフル剤?
フィレンツェレッドという情熱的なメタリックレッドを纏ったレンジローバー・スポーツHSEダイナミックD300を、御殿場近辺のカントリーロードで走らせた。
始動の瞬間こそディーゼルらしい「ブルンッ」が感じられた。
でもそこから先はボディの遮音性能の方が優っている印象。
少し前に試乗したディフェンダー110XのD300ユニットも充分に静かだと感じたが、レンジローバー・スポーツはそのはるか上を行く。
以前サーキットで試したSVRはドラッグレーサーのようにノーズを持ち上げ気味に加速し、コーナーではテールスライドすら許容するクレイジーな1台だった。
それと比べると今回のHSE D300はレンジローバー一族ならではの上品さを湛えている。
発進の瞬間をモーターが「それとわからないように」アシストし、ディーゼルの有り余る低速トルクでグイグイ加速していく。
D300の動力性能は必要にして十分だが、それが単なる「トルク発生器」で終わっていない点が最新のディーゼル直6の美点だ。
スロットルを深く踏み込めば、5000rpm付近のレッドゾーンまで淀みなく回ってくれる。
車名に見合った性格とシリーズ最大のトルクを備えたD300ユニット。
それだけでなくWLTCモードで10.3km/Lという省燃費性能までシリーズトップである点も忘れてはならない。
ストレスなく走りを楽しむことができ、お財布にもやさしい。D300はシリーズ最後のカンフル剤? そんな気がしてきた。