ロールス・ロイス初のEV「スペクター」 もうすぐ姿を見られるかも? 公道テストまもなく開始

公開 : 2021.12.13 18:45

ロールス・ロイス・レイスの後継となる同社初の完全EV、「スペクター」の公道テストがまもなく開始されます。

レイスの後継となる高性能電動クーペ

ロールス・ロイスは、2023年後半に発売予定の同社初のEV、スペクターの公道テストを間もなく開始する。プロトタイプはさまざまな条件でテストを行い、400年分の使用に相当するという約2億4000万kmを走行する。

英グッドウッドに拠点を置くロールス・ロイスのトルステン・ミュラー・オトヴェスCEOによると、今年の夏に公開されたプロトタイプは市販モデルを忠実に再現しているという。特徴的な長いボンネットと筋肉質なプロポーションを持つ2ドアのグランドツアラーとなり、2013年に発売されたレイスの後継モデルとしてふさわしい特徴を備えているということだ。

次期ロールス・ロイス・スペクターのレンダリング
次期ロールス・ロイス・スペクターのレンダリング    AUTOCAR

レイスの生産終了はまだ発表していないが、ハードトップ仕様とソフトトップのドーンの両方を今年、米国市場から撤退させていることから、その時期が近づいていると考えられる。

2008年に登場したF01世代の5シリーズをベースに、親会社であるBMWが全面的に開発したプラットフォームを採用しているのは、レイスとドーンだけだ。大型のファントム、ゴースト、カリナンには、ロールス独自のプラットフォームが採用されている。このプラットフォームにはEVのドライブトレインを搭載することができ、将来的には全モデルに採用される予定だ。

ロールス・ロイスが電動化を初めて予告したのは、2011年に発表されたファントムをベースとしたコンセプト「102EX」だ。このコンセプトは、主に大排気量のガソリンエンジンに代わるものとして、電動パワートレインの可能性を判断するために考案された。

102EXとスペクターの外観の違いには、ロールス・ロイスの電動化時代におけるデザインの進化が現れている。ミュラー・オトヴェスCEOはAUTOCARに対し、エンジン非搭載車であっても、ブランドのトレードマークである「パルテノングリル」を何らかの形で存続させることを示唆した。

スペクターは、レイスの特徴である逆開きのドアも継承し、いまのところ大幅に車高が高くなるという予測もない。そのため、高級クーペとしての性能は維持されるだろう。

2016年に発表されたコンセプト「103EX」は、ブランドのEVデザインの方向性を示す手がかりとなった。スペクターは、より生産に適したデザインを用いた、伝統的なシルエットを採用しているが、その関連性は明らかだ。

パワートレインはBMW製を採用?

現行プラットフォーム「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」は柔軟性が高く、スペクターにはエンジン車も設定される可能性がある。プロトタイプの長いボンネットは、同プラットフォームをベースにした全モデルに搭載されているツインターボの6.75L V12のためのスペースがあることを示唆している。

しかし、ロールス・ロイスは、ハイブリッド車をEVへの「つなぎ」として使うという業界の流れに逆らって、純EVドライブトレインへのこだわりを表明してきた。ライバルのベントレーが3台のPHEVをラインナップしているのとは異なり、ロールス・ロイスは従来型のパワートレインを電動化することはない。

次期ロールス・ロイス・スペクターのティーザー画像
次期ロールス・ロイス・スペクターのティーザー画像    ロールス・ロイス

ミュラー・オトヴェスCEOは、ガソリン車からEVへの「スムーズな移行」を約束し、V12エンジンは「長い間」使われることになると述べている。とはいえ、V12は2030年のラインナップ完全電動化までには退役する見込み。1904年にヘンリー・ロイスが設計し、チャールズ・ロールスが販売した2気筒の10HPから始まった126年間の内燃機関による自動車生産に終止符を打つことになる。

スペクターは、ブランド本拠地の英グッドウッドにおいて、これまでのモデルと同じ生産ラインで手作業で組み立てられる。BMWグループの既存モデルをベースにしたものではないと、同社は胸を張る。

そこで疑問なのが、ドライブトレインだ。ロールス・ロイス独自のEVモーター技術の導入は明らかにされておらず、親会社が提供するモーターの使用も確認されていない。

BMWの最上位EVである新型iX M60に搭載予定のツインモーターは、最高出力608psを発揮し、2.5トンのSUVを静止状態から約4.0秒で100km/hまで加速させる性能を有する。このような力強さは、ロールス・ロイスの滑らかで高性能なV12の特性を模倣するのに適しているだろう。

一方、BMWが開発中の長距離走行用固体電池を採用する可能性は低い。ロールス・ロイスは、顧客の多くが都市部に住んでおり、頻繁に長距離移動をしないことをブランドとしても認識しているため、航続距離を追求することはないと思われる。

BMWグループは水素燃料電池の開発にも取り組んでおり、最近発表されたX5ハイドロゲンはその姿勢を表すものとなっている。ミュラー・オトヴェスCEOは、「現在、わたし達はバッテリーが適していると考えています」とAUTOCARに語ったが、代替のソリューションを用意しておくことは「賢明」であると付け加えている。

業界幹部は一般的に、水素は大型で重量のある車両に適した動力源であると考えている。ロールス・ロイスは市販車の中で最も重いクルマの1つであるため、将来的にはFCEVの恩恵を受ける可能性がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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