セレブは、SUVがお好み? セダンより選ばれる、フォーマルシーンのクルマ事情

公開 : 2021.12.13 21:15

90年代後半、新たなカテゴリーが

SUVはピックアップの荷台にシェルを被せることで、スポーツやレジャーシーンにも使えるクルマとしたものだ。

もともと背の高さとカッコよさを両立させようというデザインがなされていた。

英ベントレーもSUVをラインナップ。電動モデルのベンテイガ・ハイブリッド(2269万円のPHEV)は、サステナブルな時代に選ばれる高級車?
ベントレーもSUVをラインナップ。電動モデルのベンテイガ・ハイブリッド(2269万円のPHEV)は、サステナブルな時代に選ばれる高級車?    近藤浩之

ただし当初は泥臭さが抜けず、高級感とは無縁だった。唯一の例外はクロスカントリー4WDが起源のレンジローバーだったが、あちらは英国では王室御用達であり、庶民がカッコいいと気軽に呼べるような存在ではなかった。

ところが1990年代後半になると、リンカーン・ナビゲーターやキャデラックエスカレードをはじめ、メルセデス・ベンツMクラスBMW X5レクサスRXが相次いで登場。

プレミアムSUVと呼ばれるカテゴリーが確立された。

それ以前からジープチェロキーフォードエクスプローラーなど、ピックアップ+シェルではなくステーションワゴンのボディを持つSUVが登場し、ファミリーカーとして使われはじめていたので、プレミアムブランドもいけると判断したのかもしれない。

続いてポルシェジャガーなど、それまでSUVとは無縁だったブランドが参入。

ついにはロールスやベントレーまでSUVを出すまでになった。クーペSUVなどニッチ狙いの車種も生まれ、いまやSUVの中にスポーツカーやミニバンがあるような状況だ。

行き渡るSUV 変わる米国ブランド

とは言えセレブの人たちは、クーペSUVは乗らないような気がする。クーペとSUVを別々に所有して、よりピュアな世界を堪能することができるのだから。

自分でドライブするならスポーツカーを操ればいい。しかし運転を他人に任せ、後席で移動する際には、セダンより背が高くてキャビンが広いSUVのほうが便利だけでなく贅沢だと考えるのは自然なことだ。

スーパーカーメーカーの伊ランボルギーニは、ウルスが4周年を迎えた。2018年~2021年末までに1.6万台が世界のセレブリティの愛車に。その85%が初めてランボを購入するカスタマーだったという。
スーパーカーメーカーの伊ランボルギーニは、ウルスが4周年を迎えた。2018年~2021年末までに1.6万台が世界のセレブリティの愛車に。その85%が初めてランボを購入するカスタマーだったという。    前田惠介

もちろんヨーロッパでは、いまなお高級車はセダンという考えの人も多くいるようだ。

しかしアメリカでは、クルマの基本はSUVと思いたくなるほど浸透している。

それが証拠にキャデラックからフルサイズセダンは消え、リンカーンはセダンそのものをラインナップからなくしてしまった。

たしかにセダンは伝統的にフォーマルなシーンで重用されてきたけれど、それはあくまでヨーロッパ的な価値観である。

アメリカにはアメリカのやりかたがあると考え、SUVをフォーマルユースで乗り回すのは、ある意味でとてもアメリカらしい選択ではないかと思うのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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