ポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモ vs アルピナB3 ツーリング ワゴン直接比較 前編
公開 : 2021.12.25 09:45 更新 : 2022.08.08 07:18
理想的な運転姿勢に落ち着いた乗り味
タイカンに乗って感心するのが、まず最初にポルシェだと思わせること。純EVだという印象は、その次に続く。
ドライビングポジションは低く、いうことなし。タイヤハウスに足もとが侵食されることなく、ペダル配置も完璧。電動パワーステアリングは、重み付けや感触の一貫性、路面やグリップの状況など手のひらへの情報量も秀抜。まさにポルシェだ。
ひと呼吸おいて車内を眺める。デジタル技術が主張し、造形は質実的。温かみには欠けるが、人間工学に優れスポーティ。アルカンターラ巻きのステアリングホイール越しに見える視界も広い。すべてが正しいと思える。
タイカンには3チャンバーのエアサスペンションが組まれている。軽くない駆動用バッテリーが搭載されているにも関わらず、その事実を巧みに包み込んでいる。しなやかな乗り心地と、タイトな姿勢制御を両立させている。
走りは常に落ち着いている。そのかわり、カーブの続く道を積極的に走らせると、流暢さで及ばないと感じる場面がある。半径が大きめのカーブを得意としている。
今回の試乗車には、オプションで装備できるポルシェ最新のシャシー技術が付いていない。後輪操舵システムにトルクベクタリング、アクティブ・アンチロールバーが。
直接乗り比べれば、その違いは明確だろう。トルクベクタリングは、コーナーでの俊敏性を5%ほど上乗せしてくれるはず。しかしタイカン・クロスツーリスモは標準のアンチロールバーのままでも、ほぼロールしない。低い重心高を、常に感じ取れる。
ポルシェ水準のシリアスさ
対するアルピナは、インテリアの設えに魅了される。ドライビングポジションは、より高く背もたれが起き気味で、ポルシェの完璧さには届いていない。最初から特別に設計されたモデルではなく、一般的なモデルを特別な水準へ高めた印象がある。
とはいえ、B3 ツーリングの昇格ぶりは目覚ましい。ベースはG21型のM 340i ツーリングだ。S58と呼ばれる3.0L 直列6気筒ツインターボのトルクを増強し、冷却系を強化。リアのドライブシャフトもアップグレードしてある。
電子制御LSDにもチューニングが施され、前後アクスル間でのトルク分配率は、より50:50へ近づけてあるという。タイヤもピレリ社製の専用品。サスペンションの設計も見直され、ステアリングフィールや直進性を高めている。
変更部分は、書き出すときりがない。ポルシェ水準のシリアスさが、エンジンやシャシーにもたらされていることは間違いない。加えて、電気モーターとバッテリーで走るタイカンより、メカニズムから感じるモノが大きい。
ツインターボ・エンジンは、聴き応えたっぷりの6気筒ハーモニーで迫力も充分。切れ味抜群のレスポンスだが、どこか完璧なMとは違う印象を受けることも確か。
アイドリング時には、肉付きの良いステアリングホイールへ振動が伝わる。静止加速からでも3速での中間加速でも、クランクから8速ATを介し、ヒステリックなほど太いトルクがワイドなタイヤへ伝達される。
ちなみに、リアタイヤの幅は265。4S クロスツーリスモの285より控えめだが、充分に広い。
この続きは後編にて。