ポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモ vs アルピナB3 ツーリング ワゴン直接比較 後編
公開 : 2021.12.25 09:46
期待以上に直感的なシャシー
タイカンは平静を失わない。限界領域も、あえて低めてある。カーブの続くチャレンジングな区間でも、どこか一元的な印象が拭えないのだ。
コーナリングでは、ブレーキペダルの踏み始めに無反応の領域もある。圧倒的な運動エネルギーを抑えるには、予想よりもう少し踏み込む必要がある。力を込めればスチール製のディスクで熱に変換し始め、鋭い制動力が立ち上がるのだが。
対象的にB3 ツーリングは、より多面的。DSCシステムの監視を緩めれば、なお一層。
タイカンと同じく、基本はナチュラルなアンダーステア傾向。しかし、その特性を打ち破ることも至って簡単。コーナー出口でブレーキを緩め、アクセルペダルを早めに倒せば、B3 ツーリングは自由な脱出角度を選ばせてくれる。容易で安全に。
期待以上に直感的。すでに一度、経験したようですらある。修正舵を与える必要のないコーナリングでも、アルピナが磨き込んだシャシーが秘める流暢さと懐の深さを、感じ取ることができるはず。
少しマニアックな領域ではある。ポルシェ・タイカンは現在の純EVでベンチマークとするべき、素晴らしい完成度にある。だが、本当にクルマとの一体感を築けるかどうかの、違いはここにある。
この性格の違いを生んでいる理由こそ、400kgの重量差。それを支えるために、タイヤサイズは太くなり、より落ち着いたシャシーバランスへ帰着している。
タイカン 4S クロスツーリスモは、スローイン・ファストアウト。でも、アルピナB3 ツーリングは、ファストイン・ファストアウトで謳歌できる。
ほんの僅か、一体になれる力が及ばない
詰まるところ、この2台対決の勝者はアルピナB3 ツーリングだ。洗練性や直進安定性、操縦精度、落ち着きという点では、タイカン 4S クロスツーリスモに対して7・8割程度かもしれない。しかし、攻め込んだ領域での見返りはアルピナが優勢だった。
残念だが、否定できない事実だと思う。よりゲルマン魂を感じる。
蛇足ながら、ボディサイズはB3 ツーリングの方が小さいにも関わらず、荷室空間はタイカンより大きくリアシートにもゆとりがある。フロアパンに巨大なバッテリーを敷き詰める必要がないというメリットは、こんな部分にも表れている。
誤解しないで欲しいのは、タイカン 4S クロスツーリスモは、ほとんどの場面で素晴らしいということ。純EVに対する希望も抱かせてくれる。ほんの僅か、一体になれる力が及ばない、ということなのだ。
アルピナとポルシェ 高性能ステーションワゴン2台のスペック
アルピナB3 ツーリング(英国仕様)のスペック
英国価格:6万7950ポンド(約1032万円)
全長:4719mm
全幅:1827mm
全高:1438mm
最高速度:299km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:10.1km/L
CO2排出量:228g/km
乾燥重量:1865kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:462ps/5000-7000rpm
最大トルク:71.2kg-m/3000-4350rpm
ギアボックス:8速オートマティック
ポルシェ・タイカン4S クロスツーリスモ(英国仕様)のスペック
英国価格:8万8270ポンド(約1341万円)
全長:4974mm
全幅:1967mm
全高:1409mm
最高速度:239km/h
0-100km/h加速:4.1秒
航続距離:445km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2245kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:83.7kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:571ps(オーバーブースト時)
最大トルク:66.1kg-m(オーバーブースト時)
ギアボックス:1速オートマティック(フロント)/2速オートマティック(リア)