ケータハム・セブン 420R チャンピオンシップへ試乗 孤高のワンメイクレーサー 前編
公開 : 2021.12.23 08:25 更新 : 2022.08.08 07:18
ケータハムのワンメイクレース用に作られた、最も純粋で過激なセブン。英国編集部がサーキットで試乗しました。
パワーウエイトレシオは911 GT3に匹敵
これまでにないほど威圧的なブラックのケータハム・セブンが、トレーラーから降ろされる。興奮するとともに、一抹の恐怖も感じる。このケータハムには、確かにこの色が一番似合うと思う。
四角くフラットなテールが、まず先に姿を表す。鮮やかなレッドに塗られた、大きなロールケージがすぐに続く。エイボン社製のスリックタイヤが、粘っとした光沢を放つ。
磨かれた太いエグゾースト・サイレンサーが、陽光を反射する。フロントガラスはない。エンジンから伸びる4本のタコ足が、サイレンサーへ導かれている。フロントタイヤの上には、小さなサイクルフェンダーがかぶさっている。
ゼッケンは7番。数秒の時間をかけて、今日の試乗車が姿を表した。妥協なしに作り上げられた、ケータハム・セブン 420R チャンピオンシップというレースカーだ。その姿からして、忘れがたいインパクトがある。
このシングルシーターのケータハムは、現在販売されているセブンで最もパワフルなモデルではない。その栄光は620Rが保持している。スーパーチャージャーで加給される314psのモンスターは、どんなスーパーカーにも太刀打ちできる。
この420R チャンピオンシップの最高出力は、177ps。4気筒エンジンは自然吸気のまま。それでも重さ当たりの馬力、パワーウエイトレシオは最新のポルシェ911 GT3に匹敵する。
シーケンシャルMTにスリックタイヤ
420R チャンピオンシップは、ケーターハムのワンメイクレースに作られたサーキット専用マシン。このレースには4カテゴリーが存在するが、その最上位用モデルに当たる。911 GT3とは、直接戦うことはないだろう。
ケータハム 620Rのように、公道を走るための法規に準拠する必要もない。フロントガラスはなく、新製品だというタイヤには、溝もまったく彫られていない。
トランスミッションは通常のモデルと異なり、サデブ社製の6速シーケンシャルMT。過去にも公道用のセブンへ限定的に採用されたこともあるが、鋭いシフトアップと、素晴らしくメカニカルな感触を味わわせてくれる。
恐らく、最も精巧なデュアルクラッチATの感触をも超えると思う。そこから、ドディオン・アクスルに載るタイタン社製リミテッドスリップ・デフへパワーが導かれる。
エンジンは、フォード社製の2.0L 4気筒デュラテック・ユニット。スリックタイヤのグリップ力とパワーを受け止めるため、各部に補強が施され、A型フレームも剛性が高められている。
サスペンション・スプリングはアイバッハ社製で、ダンパーはビルシュタイン社製。サスペンションアームは新設計のものになり、キャンバー角の調整が可能だという。
420R チャンピオンシップに乗り込む方法は、ロールケージの上から身体を落とすのが良い。シートというより、身体が動かないようにするためのバケットに、腰をはめる。通常のケータハムより背もたれが寝ている。