キメラ・エボ37へ試乗 ランチア・ラリー037を復刻 4気筒ツインチャージャー 後編
公開 : 2021.12.24 08:26 更新 : 2022.11.01 08:52
エボ37を印象付けるハンドリング
エンジン以上にエボ37を印象付けるのが、ハンドリング。量産されるような高性能モデルと比較しても、アンダーステアが抑えられている。即座にフロントノーズは向きを変え、慣性や抵抗はほとんど感じられない。
コーナーリング中は、車重の軽さとシャシーバランスのおかげで、グリップ力も高い。ピレリPゼロ・タイヤの限界を超えても不安を感じないほど、クルマとコミュニケーションが取りやすい。
メッキ加工されたLSDがリアタイヤを統制し、テールを好きなだけ正確に振り回せる。420psの力を動員すれば、無限にドリフトアングルを保持できそうだ。クルマのしなやかさや漸進性、挙動の掴みやすさに深く感心する。
ただし、タイトコーナーでは少しトリッキー。予期しない勢いで回転する場合がある。クイックなステアリングでも、対処しきれないこともあるだろう。それ以外のコーナーでは、オーバーステアを堪能できる。高速で安全に運転できるセットアップだ。
許されるなら、アルプス山脈のワインディングでエボ37を味わってみたい。恐らく、人生で最も忘れられないドライブの1つになるだろう。
グループB時代のラリードライバー、ミキ・ビアシオン氏が動的特性のチューニングに協力してくれたと、ベッティが話す。この仕上がりを体験すれば、疑いようはない。
伝説的な傑作と現代的な技術の融合
近年のレストモッド事例もそうだが、ほぼすべてが新しく作られたといえるキメラ・エボ37も、非常に高価。完成度の高さと関わった人物の名前を聞けば、驚くことではないかもしれないが、48万ユーロ(約6240万円)だ。
明らかに前例のないプロジェクトの成果であり、伝説的な傑作に現代的な技術が見事に融合されている。再設計された2.2L 4気筒ツインチャージャー・エンジンも素晴らしい。白眉の操縦性は、唯一無二のものだといえる。
残念ながら、筆者はこれまでランチア・ラリー037を運転した経験はない。しかし、エボ37がその体験に相当近いものなのだろいう、ということは想像できる。電動パワーステアリングと、一般道での乗りやすさを除いて。
キメラ・エボ37をガレージに迎えることができるドライバーは、僅か37名。プライスレスなクルマが誕生したことは、間違いないと思う。
キメラ・エボ37(欧州仕様)のスペック
英国価格:48万ユーロ(約6240万円)
全長:3915mm(オリジナル・ランチア・ラリー037)
全幅:1850mm(オリジナル・ランチア・ラリー037)
全高:1245mm(オリジナル・ランチア・ラリー037)
最高速度:305km/h(予想)
0-100km/h加速:3.0秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1050kg(予想)
パワートレイン:直列4気筒2150ccターボチャージャー+電動スーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:507ps/7000-7250rpm
最大トルク:50.9kg-m
ギアボックス:6速マニュアル