ルノー・アルカナ Eテック(1) 長期テスト 手頃なクロスオーバー・クーペ
公開 : 2021.12.18 09:45 更新 : 2021.12.21 15:49
上級ブランドから火の付いたクーペSUV人気に、フランスのルノーも参戦。長期テストで実力を検証します。
比較的手頃なクロスオーバー・クーペ
自動車市場に新しいカテゴリーが誕生した瞬間は、意外と冷笑されることが多い。1990年代にスズキが投入した、X-90というモデルをご記憶だろうか。タルガトップの2シーターSUVだ。
残念ながら、そこからフォロワーが誕生することはなかった。しかしスポーティなルックスのSUVという考え方は、われわれの記憶に残ったようだ。
2007年、BMWはX6を投入する。少し不格好で、実用性は二の次のSUVという存在に戸惑う人も多くいたが、蓋を開けてみれば成功と呼べる支持を集めた。
クルマを選ぶ時、荷室の大きさは重要な尺度になるが、それだけではない。ルックスやイメージは、もっと大きな評価軸になることも多い。その結果、クロスオーバー・クーペは新たなトレンドを生み出した。特に上級ブランドの間で。
新しく長期テストに加わったルノー・アルカナは、これまでのモデルとは少し違う。まず、デザインが良い。筆者の感覚では、過去最もスタイリッシュなクロスオーバー・クーペだと思う。
さらに値段も手頃と呼べる範囲にある。英国価格は2万5300ポンド(約384万円)からで、この分野を得意としてきたプレミアム・ブランドのモデルとは、明らかに価格帯が異なる。
アルカナはルノーとしては初めて、全モデルがハイブリッド化されていることも特色。エントリーグレードでも、電圧48Vの(スターター・ジェネレーター)ISGを搭載したマイルド・ハイブリッドになる。
SUVは燃費が悪い、というイメージ向上にもつながるだろう。
1.6L自然吸気4気筒+電気モーター
今回長期テストにやってきたアルカナは、Eテック145と呼ばれる仕様。48psの駆動用モーターとISG、1.2kWhの駆動用バッテリーが組み合わされた、より本気度の高いハイブリッドだ。
このアルカナなら、駆動用バッテリーの充電量が充分あれば、市街地など穏やかな環境を電気モーターだけで走行できる。ただし、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)のように、長くは走れない。
アルカナの荷室フロアの下には、より大きな駆動用バッテリーを載せられそうな空間がある。ルノーはもう一手、打ってくるのではないだろうか。
電気モーターとペアを組むのが、1.6L自然吸気4気筒ガソリンエンジン。最高出力は94psを発揮する。駆動用モーターとともに知的な4速ATに結合され、フロントタイヤを駆動し、エンジンで駆動用バッテリーの充電も可能としている。
高度なシステムだが、EVモードで市街地を流していて充電量が足りなくなると、エンジンが突然始動。高回転で働き始め、平穏な走りを不意にそがれる。エンジンの力が伝わるまでに一瞬のためや、クラッチが滑るような印象も感じられるようだ。
その短い時間を除けば、システムはシームレスに機能するといえる。ダッシュボードにはバッテリーの充電量を表示でき、効率的な運転を支援。下り坂ではシフトセレクターをBに倒すことで、回生ブレーキを強く効かせることもできる。