ジャガーMk VII/VIII/IX 英国版クラシック・ガイド エリザベス王妃も愛用 前編

公開 : 2022.01.09 07:05

1950年代のジャガー製スポーツ・ラグジュアリーサルーン。クラシックカーとしての魅力を、英国編集部がご紹介します。

XK120譲りのエンジンに優雅なボディ

1950年のロンドン・モーターショーで主役級のデビューを飾った、ジャガーMk VII。新設計に見えたものの、実際はMk Vのシャシーに手を加え、XK 120の高性能なツインカム・エンジンを融合させた、ラグジュアリー・サルーンだった。

3050mmのホイールベースを伸ばすことなく、Mk Vより76mm長いエンジンをシャシーの128mm前方へ搭載。先代より車内空間を拡大させた、1950年代風の優雅なボディが載せられている。

ジャガーMk VIII(1956〜1958年/英国仕様)
ジャガーMk VIII(1956〜1958年/英国仕様)

全幅1867mmという恰幅のいい全幅は、北米に住む人の体型にも対応。英国製ライバルに対する、ストロングポイントにもなった。

フロントドアにはツールケースを内蔵。リアフェンダーの左右には、合計77Lのガソリンを詰めることができる燃料タンクが分割されて収まり、荷室空間を広く取れている。

先進的な機能として、寒冷時の始動性を良くするオートチョークや、自動調整サーボ付きのブレーキ、外気導入によるヒーターとデフロスター、スライディング・サンルーフなどを標準装備。1952年からは、2速ワイパーも与えられている。

北米仕様には当初から3速ATが載っていたが、1953年からは英国仕様にも搭載。英国では初となるATが選べる量産車になった。

1952年に試乗した自動車評論家が感じた唯一の不満は、MTの変速感。レバーが長く、ストロークは短く、より強力なシンクロメッシュが欲しいと指摘されている。ジャガーは1960年代半ばまで、そのモス社製トランスミッションを採用し続けたが。

運転の喜びにも事欠かない4ドアサルーン

同時期のアメリカ車と比べると、初期のMk VIIのルックスは控えめ。禁欲的にすら見えた。そこでジャガーの創業者、ウイリアム・ライオンズ氏はクロームメッキを追加。きらびやかさを加えた。

英国のエリザベス王妃もジャガーMk VIIに好んで乗っていた。しかしインテリアが気に入らなかったのか、コーチビルダーのパークウォード社によってアップグレードが施されている。

ジャガーMk VIII(1956〜1958年/英国仕様)
ジャガーMk VIII(1956〜1958年/英国仕様)

それを知ったライオンズは、コスト増を抑えつつ同水準の豪華さを実現するように開発スタッフへ指示。その結果誕生したのが、Mk VIIIだ。

Mk VIIIの車内は壮観で、ウッドパネルを贅沢に採用。リアシート側にはピクニックテーブルに3つのシガーライター、5つの灰皿、ラムズウールのマットなど、これでもかという装備も与えられている。

シャシーは設計に優れ堅牢。そのおかげで英国では現存数も多い。しかし、場合によっては取引価格よりレストア費用の方が高く付く。ボディやインテリア、メカニズム関係の修理や維持には、相応の予算を組んでおきたい。

ジャガーが掲げた「優雅で広々と、速く」というスローガンは、このモデルへピッタリ。壮大な4ドアサルーンは運転する喜びにも事欠かない。驚くほど攻め立てた走りにも応えてくれる。Mk VIIは、レーサーとしても活躍したほど。

ただし、初期型のATはあまりお勧めできない。3.8Lエンジンを載せたMk IXが、最もバランスに優れるといえる。

記事に関わった人々

  • マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ジャガーMk VII/VIII/IX 英国版クラシック・ガイド エリザベス王妃も愛用の前後関係

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