プジョー308ブルーHDi 150フェリーヌ

公開 : 2014.05.23 23:50　　更新 : 2017.05.29 19:00

■どんなクルマ?

プジョーはブルーHDiというブランド名の元に前代未聞の環境性能やパワーを持つ経済的なディーゼルエンジンを世に送り出した。その結果フォルクスワーゲン・ゴルフやフォード・フォーカスなどの強豪がひしめくこのCセグメント・ハッチバックのクラスにおいて、今までに例を見ない奮闘を繰り広げているのだ。

新聞を読めば、”私達の子どもに多大なる悪影響を及ぼす” と言わんばかりの大げさな見出しと共に、ターボ・ディーゼル・エンジンがかつての輝きを失っていることに気づくはずだ。事実、必然的にCO2排出を余儀なくされる石油系企業にとっては悪いニュースでは無いのだけれど、最近になってはCO2だけでなく汚染物質となる微粒子や窒素酸化物の方にも批判の矛先が向き始めているのである。

プジョーは2007年から廃棄汚染物質の抱える問題を研究し続けてきた。そして最近になり、より厳しさを増すユーロ6にも対応することのできるブルーHDiエンジンを発表したのである。このエンジンは環境にやさしいだけでなくパワーやトルクも充分に発揮し、プジョーのエンジニアをして”この市場で最も高効率で環境性能に優れたエンジン”だと言わしめたのだ。

ではどれほどの実力を持つのだろうか。プジョーのe-HDiエンジンと比較するのが妥当だろう。1.6ℓのe-HDiエンジンの最高出力は117ps、CO2排出量は95g/km、燃費が27.0km/ℓであるのに対して、ブルーHDiは122ps、82g/km、32.2km/ℓである。そのうえ、2016年から施行されるユーロ6に先駆けて対応しているというのだから、いかにこのエンジンが優秀かお分かりいただけるだろう。

■どんな感じ?

今回テストしたのはブルーHDiの高性能版に位置するフェリーヌ・グレードで、2ℓエンジンの最高出力は150ps、0-100km/hが8.9秒、最高速度は209km/hという仕様だ。合算燃費は24.8km/ℓであることから、日常的な運転なら19.5km/ℓといったところで、努力次第では21.2km/ℓを優に超えるだろう。

快活で扱いやすく、スロットル・レスポンスに曖昧さがない。その上、低速時の柔軟性もあり、追い越しの加速も申し分ない。ただしエンジン特性ゆえに4000rpm以上になるとやや力不足になるため、早めのシフト・アップが必要になる。

改良は完璧というにはあと一歩足りない。例えば、エンジン音はいつだってキャビンに入り込んでくるし、アイドリングは標準レベルのエンジンよりもガタガタと落ち着きに欠ける。その上、シフトチェンジを行うときは、改良はされているもののザラリとした感触を伴うし、クラス屈指のトランクの広さを持つ反面、後部座席は(多くの人は充分だと言うとは思うが)目を見張るほどの広さがあるわけではない。しかしながら、長めに誂えられたシフトノブは短いものに比べると扱い易いし、径の小さなステアリング・ホイールは小回りを要する曲がり角を抜ける場合や、低速での操作に非常に便利である。

動力性能の観点で見ていくと、この車のボディ・コントロールは良好だ。ただし二次的な不満とも言うべきか、標準の17インチに対してテスト車両は225/40/18インチをタイヤを履いているのだが、タイヤノイズを発生させていたし、ほかの強豪とくらべても明らかに落ち着きが無い印象だった。

■「買い」か?

新しく開発されたブルーHDi エンジンは既に完成度の高いプジョー308に大きなアドバンテージを与える。その上、2ℓのエンジンと組み合わせる事により更に速い車になるのだ。特に路面の状態が良くない場合に、エンジンの柔軟性や即座に湧き出すトルクは心地よくクイックなハンドリングと相まって、存分に力を発揮してくれるはずだ。ライバルと肩を並べるのはもはや時間の問題だ。

(スティーブ・クロプリー)