いま、EVについて言えること 値段・環境負荷・充電不安…… 購入時の疑問に回答

公開 : 2021.12.22 06:05

EVを買うと航続距離の不安に悩まされるのか?

申し訳ないのだが、この疑問に対する答えは「イエス」でもあり「ノー」でもある。フォルクスワーゲンe-Up!のような航続距離の短い小型車を購入し、長距離走行に使用する場合、190kmごとに停車するのは面倒だろう。また、航続距離ではなく充電施設への不安も大きくなっているのかもしれない。

しかし、急速充電機能を備えた航続距離の長いEVを持っていれば、そしてバッテリーをしっかり充電した状態で街を離れることを忘れなければ、問題はずっと少なくなる。400km以上の航続距離を持つEVは数多くあり、500km近く走るモデルも登場している。

テスラは独自の急速充電設備を整えており、欧州では他社製EVへの開放も試験的に始まっている。
テスラは独自の急速充電設備を整えており、欧州では他社製EVへの開放も試験的に始まっている。

テスラは最良のケースで、同社のスーパーチャージャー・ネットワークは戦略的に配置されている。長年テスラを所有しながら、充電に問題を抱えていないオーナーを見つけるのはそれほど難しいことではない。

でも、テスラは買えない。充電インフラは十分か?

現時点では、この質問に対する答えは、質問者がどのような状況に置かれているかによる。テスラ以外の充電ネットワークは、まだ整備されておらず、多くの改善が必要だ。

しかし、EV狂信者は、EVは実用的で楽しいと猛烈に主張している。自宅やその近くに充電設備があり、計画的な人であれば問題なく走れるというのが話の筋のようだ。

アウディが最近公開したEV充電ハブでは、待ち時間をラウンジで過ごすことができる。
アウディが最近公開したEV充電ハブでは、待ち時間をラウンジで過ごすことができる。

ガソリン車やディーゼル車のように、簡単に燃料補給ができると期待するのはやめたほうがいい。しかし、ポジティブな兆候もたくさんある。

欧州のケースだが、街灯に3kWの充電ポイントを取り付けたり、幹線道路に350kWの急速充電ネットワークを構築したりするインフラ企業が増えている。EVに否定的な人々も、2030年以降にクルマの大半がEVになれば、状況は改善されるはずだと考えている。

EVを買ったら、本当にCO2削減に貢献できるの?

EVは走行中にCO2を排出しない。これは良いスタートだ。しかし、バッテリーの生産時にはCO2を大量に排出するため、パーフェクトとは言い切れない。

ICCT(国際クリーン輸送協議会)の調査によると、中型バッテリーを搭載したEVのCO2排出量(相当)は35g/km程度で、バッテリーが大きければ大きいほど数値は悪化する。最新のエンジンに対して大きなメリットがあるわけではない。

製造時に発生したCO2を取り戻す(エンジン車との差を埋める)ためには7万kmほど走らなければならないという調査結果もある。
製造時に発生したCO2を取り戻す(エンジン車との差を埋める)ためには7万kmほど走らなければならないという調査結果もある。

他にも、EVにとって有利とは言えない研究結果はいくつもある。アドバイスとしては、適度な大きさのバッテリーを搭載したクルマを買うこと、長距離の移動が多い場合はプラグイン・ハイブリッド車を選ぶこと、そして(可能であれば)バッテリーメーカーが再生可能エネルギーを使って製造しているかどうかを確認することだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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