ポルシェ・タイカン GTS スポーツツーリスモへ試乗 新スタイルで二兎を得る
公開 : 2021.12.31 19:05
シューティングブレーク風ボディをまとった、最もスポーティな純EVの派生モデルを、英国編集部が評価しました。
サルーンとクロスツーリスモの融合
パワートレインのハイブリッドは聞き慣れたもの。でも、こちらのポルシェ・タイカンは異なるボディスタイルが組み合わされた、別のハイブリッドだ。
クロスオーバーのタイカン・クロスツーリスモを持ってきて、オフロード・ライクな樹脂製オーバーフェンダーなどを剥がす。そして、車高をサルーンのタイカン並みに低くする。その結果誕生したのが、このタイカン・スポーツツーリスモといえる。
つまり、クロスツーリスモが備える余裕のある後部座席と広々とした荷室が、背の低いタイカンに備わっている。
サルーンのタイカンほどのダイナミックな走りや、クロスツーリスモほどの実用性や走破性は備えていないかもしれない。両方の良いところを、上手に持ち合わせている可能性もある。ハイブリッドの感じ方は、読者によって異なるだろう。
AUTOCARでは先日、通常のタイカン GTSの試乗レポートをお伝えした。その時に運転が許されたのはサーキットのみだった。反面、タイカン GTS スポーツツーリスモの運転は、同じ日ながら公道のみという指定。残念ながら、直接的な比較はできなかった。
しかしスポーツツーリスモは、サルーンのタイカンとクロスツーリスモとの、両方の長所をしっかり受け継げているようだ。中途半端なハイブリッドではない。
サルーンとの走りの違いは感じられない
もし読者が2台を試乗して、スポーツツーリスモはサルーンのタイカンより車重が15kg重いことを感じ取ることができるなら、自動車ジャーナリストになれると思う。筆者は残念ながらわからなかった。
あるいは、少し高めのルーフラインがもたらす重心高の違いが生む、ハンドリングの変化に気付くことができるなら、世界トップクラスのシャシーエンジニアにもなれるかもしれない。その違いは極めて小さい。
基本的にシャシーのセットアップはサルーンと同じ。サーキットと公道という違う環境で乗り比べたこともあって、タイカン・スポーツツーリスモは、サルーンのタイカンと同じように加速し、曲がり、停止するように感じられた。
タイカン GTS スポーツツーリスモの英国価格は、サルーンのGTSから800ポンド(約12万円)高いだけ。ダッシュボードにストップウォッチを置く、スポーツクロノパッケージと殆ど変わらない差額だ。
その差で通常なら400L、リアシートを折りたためば1200L以上という大きな荷室空間が得られる。しかもタイカンのGTSは、現在売られている純EVでベストなモデルのベストな仕様といえる。
サルーンとのドライビング体験の違いは極わずか。ポルシェ・タイカン GTSで、スポーツツーリスモにするべきか悩む必要はないといっていい。