アウディR8 V10パフォーマンス RWDへ試乗 570psのMR V10エンジンを堪能
公開 : 2022.01.01 19:05
主役は自然吸気のV型10気筒エンジン
後輪駆動のRWDだが、公道を走らせてみた第一印象は、予想に反してクワトロと大きな違いは感じられなかった。公道の速度域ではわかりにくい。
舗装に砂が浮いていた区間で、トラクションコントロールが優しく介入したことが何度かあった程度。パフォーマンス・クワトロなら、そんな助けは不要だっただろう。
ミシュラン・パイロットスポーツ4Sタイヤが温まり、アスファルトを直接掴める道ならグリップ力は強大。現実世界で運転する限り、まったく不足はない。
V型10気筒エンジンがR8の主役。ランボルギーニ・ウラカンとは異なる個性を作るために、低速域でのノイズは小さく、可変エグゾーストには静かなモードも追加されている。それでも、野蛮な本性はすぐに引き出せる。
濃密で鋭い高音の排気音を響かせ、レッドラインに迫るほど獰猛さを顕にしていく。6000rpmを越える頃には、ウラカンを除くライバルより素晴らしい音響を楽しめる。まだ3000rpm近い回転域が残されているのに。
実際の速さでいえば、V10パフォーマンス・クワトロより僅かに遅いだろう。それでも充分に鋭い。アウディによれば、RWDの0-100km/h加速は3.7秒だというが、0.1秒遅れるだけに過ぎない。
自然吸気のV型10気筒は、最新のターボユニットと比べれば低速域でのトルクが細い。だが、アクセルペダルへの反応は極めてクリア。1馬力毎に引き出せるような、精巧な質感すら備えている。
より攻撃性を増すダイナミック・モードを選べば、デュアルクラッチATのシフトアップも痛快。荒々しさを隠すことなく、素早く次のギアへつなぐ。
より高い負荷で明確なMRらしい操縦特性
スパイダーの試乗ルートは、もっぱら幅の狭いワインディング。低速のタイトコーナーでは、最も自由度の高いパフォーマンスドライ・モードを選ぶと、後輪駆動であることを明確に感じられた。
このモードなら、電子制御が介入する前に、思い切りリアタイヤをスライドさせることが可能。それでいて、スポーツカーらしい上質さも失わない。コーナリング・ラインは細かな操作と荷重移動で、簡単に外へ膨らませたり内側へ絞れる。
クーペのV10パフォーマンス RWDは、島内のマスパロマス・サーキットで味わった。狭いランオフエリアのすぐ先に、大西洋が広がっている場所だが。
タイヤはミシュラン・カップ2。より高い負荷を掛けていくと、明確なMRらしい操縦特性を引き出すことができる。ドライコンディションなら、すこぶる爽快だ。
試乗中、通り雨が降った。ウェット・コンディションでは、遥かに繊細なアクセル調整が必要だということも確かめることができた。
R8のステアリングフィールは、パフォーマンス RWDでも変わらない。フロントノーズは操作に対し、正確に応答してくれる。感触が薄く、フィードバックが弱いことも同様だけれど。
今回は異国の地で、欧州仕様での試乗となった。英国の一般道で、英国仕様を改めて評価してみたいところだ。