ベントレー・コンチネンタルGT コンバーチブル 英国のリビエラを巡る休日 後編
公開 : 2022.01.01 20:25
英国のリビエラと称される、南西部のペイントン。ラグジュアリーなコンチGT コンバーチブルで英国編集部が訪れました。
もくじ
ーGTという言葉を最も正しく理解する
ー底の見えないような重厚感とソリッドさ
ー顕著で深遠な英国品質が宿る芸術作品
ー番外編:V8かW12か
ーベントレー・コンチネンタルGT コンバーチブルV8(英国仕様)のスペック
GTという言葉を最も正しく理解する
ベントレー・コンチネンタルGT コンバーチブルは、筆者が普段乗っているシトロエン2CVより遥かに高速で、遥かに高価。ルーフを開く構造のために170kgも車重が増えている。その結果、0-100km/h加速時間は0.1秒増しと、動的能力も鈍っている。
ドライビング体験の精度が低くなる。重くなるから燃費も落ちるし、CO2の排出量も増える。何を目的としているクルマのか、疑問を持たないわけではない。
筆者はベースモデルとなったクーペ以上に、優れた走りを持つコンバーチブルに乗ったことがない。それはこのコンチネンタルGTでも同じだ。
しかしベントレーは、この価格帯で購入できるベスト・モデルだとも思う。GT、グランドツアラーという言葉を最も正しく理解し、最も正しく確実に実行へ移してくれる。
筆者が書くような試乗記事は、実際のオーナーが過ごすであろう時間より短い体験でまとめられる。クルマがデザインされたターゲットとなる人のことを、良く理解する必要がある。現実的には筆者ではない。
そのターゲット層に向けた能力として、コンチネンタルGT コンバーチブルは素晴らしい高みにある。何が重要で、何が重要でないかが見事に整理されている。クーペのGTと同等のハンドリングを得られないことは、ベントレーも重々承知している。
確かにコンバーチブル化で車重は増えているが、このクルマの場合は歓迎されるべきこと。ベントレーらしい乗り心地を得るために、構造的な補強として必要なものだ。
底の見えないような重厚感とソリッドさ
印象的なまでに滑走する。ルーフを閉じれば、クーペのコンチネンタルGTと同じくらい車内は静かに保たれる。金庫のような、完全無欠の強固さは欠けている。だが、そもそも布張りの金庫など存在しない。
ルーフを開いた時の見た目も美しい。これもとても重要な要素だ。
コンチネンタルGT コンバーチブルで最も秀逸と呼べる部分は、固定ルーフがなくても影響を受けていない。ベントレーとして、素晴らしい。
インテリアには、美しく磨き込まれたスイッチ類が艷やかなウッドパネルとともに並び、圧倒的な高級感を生んでいる。思わず、運転への集中力が散漫になるほど。デザインや仕立ての品質にも、一切の妥協は感じられない。
そしてこのクルマが持つ魅力の核心は、ドライビング体験の感じさせ方。ルックスも動力性能も、サウンドも素晴らしい。それ以上に、底の見えないような重厚感とソリッドさに圧倒される。技術者の成果として、これ以上の到達は難しいのではないだろうか。
ベントレーを端的に表現するタグを付けるとするなら、オーバーエンジニアリングの芸術作品、といった言葉になるかもしれない。ベントレーがどうあるべきか、を表していると思う。
筆者にとってのラグジュアリーとは、クルマに施された贅沢な装飾だけではない。強さや深さ、構造的な完全性といった、簡単には達成できない領域でこそ想起されるものだ。