かつての人気「リッターカー」なぜ苦戦?  軽の隆盛/ニーズ変化が背景

公開 : 2021.12.23 11:40

小さなクルマのニーズの中身

ここで小さなクルマのニーズと現在の市場ラインナップを整理してみたい。

小さなクルマのニーズは、ざっくりと以下の3つに集約されるだろう。

小さなクルマのニーズ

・なるべく安いクルマが欲しい。

・扱いやすいサイズ/室内の広い(実用性の高い)クルマが欲しい。

・扱いやすいサイズで、高性能(走行性能など)なクルマが欲しい。

一方、小さなクルマとして実際に販売されているラインナップは以下のようになる。

実際に販売される小さなクルマ

・安価で小さな軽自動車(アルトやミラなど)

・室内の広い「ワゴンタイプの軽自動車」(NボックスワゴンRなど)

・安価な「リッターカー」(パッソマーチなど)

・1.5Lエンジンやハイブリッドの「高性能なコンパクトカー」(ヤリスやアクアマツダ2など)

・「室内の広いコンパクトカー」(ノートやフィットなど)

ニーズとラインナップをすり合わせれば、「安いクルマが欲しい」というニーズの第1候補は「軽自動車」だ。

税金の高い登録車は除外される。

続いて「室内の広いクルマ」は、「ワゴンタイプの軽自動車」と「室内の広いコンパクトカー」になる。

ランニングコストを重視するなら軽自動車、走行性能もあわせてほしければ「室内の広いコンパクトカー」になる。

そして走りや燃費の良いクルマとなれば、1.5Lエンジンやハイブリッドの「高性能なコンパクトカー」が選ばれる。

リッターカーが提供する価値

つまり、ニーズ側から見ると、リッターカーを求める層がいないのだ。

リッターカーの価値は、「安いこと」と「走行性能が良いこと」の2点だ。つまり、「安いクルマが欲しい」と「高性能なクルマが欲しい」というニーズに応える。

しかし、安さで言えば税金の安い軽自動車にはかなわないし、走行性能では1.5リッター車やハイブリッドにはかなわない。

さらに近年の軽自動車の走行性能の向上は目覚ましく、燃費性能も驚くほどの高レベルである。

街中を走るだけであれば不満はないだろう。

かつては、「安いクルマが欲しいけれど、やっぱり軽自動車は走りがダメ」と考える層が一定数いた。軽自動車の走りに満足できない人たちだ。

そうした人たちがリッターカーの主な購買層であった。

ところが、軽自動車が進化するに従い、そうした考えは少なくなる。そうとなれば、コストを重視する人は軽自動車に流れてしまう。

かつてあったニーズが、今では消えてしまった。それが、現在のリッターカー苦戦の理由ではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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