ヴォグゾール・カスケーダ・エリート1.6i
公開 : 2014.05.23 23:40 更新 : 2017.05.29 18:29
■どんなクルマ?
この記事でテストするのは新開発された1.6ℓターボ・ガソリン・エンジンを搭載するヴォグゾール・カスケーダだ。
2013年に、アウディA5カブリオレやフォルクスワーゲン・イオスに対抗すべく、ルートンのエンジニアが作り上げたカスケーダを試乗した際、その出来のよさにとても驚かされた事は記憶に新しい。
そこそこの人気を誇ったアストラ・ツイントップよりもむしろ、ヴォグゾール・アストラと似通った土台をもつカスケーダの強固な外装は、(価格こそ違えど)アウディA5のオープン・モデルと比べてコストに見合った満足度を提供してくれる。
デビュー当初はやや控えめな140psの1.4ℓターボか、170psの1.6ℓ直噴エンジン(ATのみ)の2種類のみしか用意されていなかったのだが、この度1.6ℓターボが仲間入りを果たしたのだ。
最高出力は200ps、最大トルクは28.6kg-mを発揮する新たなエンジンは、6速マニュアル・ギアボックスと組み合わされ、0-100km/h加速を8.5秒でこなす。
またSEとエリートの2グレードが用意され、エアコン、18インチ・アロイホイール、DABチューナー、ブルートゥース接続、クルーズ・コントロール、リア・パーキング・センサー、AUX-INポート、USB接続の全てが標準装備となる。
今回テストに使用した車両は、上級グレードのエリートであったため、上記に加えてオート・エアコンや、ヒーター付きの電動スポーツ・シート、レザー・トリム、電動ワイパー/ヘッドライトが含まれる追加キットが選択されていた。
更には£500(7万4千円)の19インチの5スポーク・アロイホイール等のオプションも追加されていたために、車両価格は£32,520(482万円)まで膨れ上がっていた。
■どんな感じ?
車重が車重だけに、ゼロ発進加速はあまり振るわない。
ただしガッカリするのはまだ早い。なぜなら車重は決して軽くないものの、アンダーボディのクロス補強や高張力素材、強化Aピラーを用いることにより、ねじれ剛性の向上という点では非常に剛毅な印象を与え、車重分の借りをここできちんと返しているからだ。
一度走りだせば、絶対的なパフォーマンスなぞ気にもならないほどエンジンに柔軟性があり、回転そのものにも引っかかりはなく非常に楽しい味付けであることに気付かされる。特筆すべきはそのスムーズさで、車格に見合った高級感や快適性を高いレベルで提供してくれるのは間違いない。
ただし、ドライビング時に耳に届くエグゾースト・ノートにまで期待をすると少し落胆させられるかもしれないことをここに書き加えておく。
テスト車両に組み合わされる ”ハイパー・ストラット” フロント・サスペンションはどんな路面に対してもきちんとした仕事をしてくれ、強くブレーキングした際も荷重移動を行いやすいセッティングだと感じた。
絶対的な運動性能は1.6ℓターボ版でさえあまり期待しないほうがいいだろう。あくまでこの車は、リラックスした運転でこそしっかりしたボディを味わえるのだ。ゆっくりと走る場合には、オプションの19インチ・ホイールによる突き上げを感じることがあったが、それ以外はおおよそ快適な乗り心地に終始した。
またオープンカー特有の剛性不足を感じることはなく、同時にシャシーの振動も全くない。
2枚重ねの電動ファブリック・ルーフは17秒でたたむことができ、また再度閉じる場合は19秒を要す。それぞれの動作は48km/h以下であれば走行中でも行うことができ、機械的な音は極力抑えられていて、幌はリア・シート後方にすっぽりと収まる。その際のルックスも考慮して内装のデザインはスタイリッシュに仕立てられている。
ウインド・ディフレクターを上げていない時でさえ、オープン時は97km/hまでほとんど風の巻き込みはほとんどない。
ルーフを閉じた際の空力特性も非常に優れていて、キャビンに風切り音が侵入してくることはない。またその際の後部座席は大柄でない人にとっては充分なスペースが確保されている。
シートはあらゆる部位を調整可能で、ステアリングやダッシュボードにも余すことなくレザーがあしらわれている。ただしセンター・コンソールは完全にアストラのそれを流用しているため、全体の雰囲気に比べて少しばかり浮いた印象だ。
4人の大人に対してキャビンには比較的充分な広さがあり、後部座席に乗り込む際も不自然に体を捻る必要はない。その上380ℓのラゲッジ・スペースを確保しているのだから、日常の使用で不便を感じることは無いだろう。ただしルーフを畳んだ状態のトランク・ルームはスペース的に、また使い勝手も少しばかり”難あり”だ。
ルーフを閉じた際のリア・ウインドウ(スクリーン)は狭く使いものにならないため、4696mmの全長をもつ車だけに後方視界はかなり制限される。
■「買い」か?
このクルマは、とりわけ優秀な実用性をもっている。それだけではなく、1.6ℓのターボ・エンジンは経済性に優れる上、ラグジュアリーな雰囲気を演出してくれるのだ。ディーゼル特有の癖を嫌う人にとっては有力な候補となりうるだろう。
£5000(7万4千円)安い一つ下のグレードと比較して、£28,310(419万円)という価格による恩恵を感じ取れるかと問われれば、首を縦にふることは難しい。また参考までにこの価格はアウディ・A5カブリオレのエントリー・レベルと同等である。
だからといって、他ライバルと比較している人々に対してこのヴォグゾールは期待を裏切ることはないだろう。
ただし、出来の良いエンジンと、魅力的なパッケージングをもってしても、やはりヴォグゾール自体のもつ先入観を完全に覆すことは難しいのは事実だ。
そういった意味ではこの車を購入すべきかどうか、よくよく考えなおしてみる方がいいかもしれない。“そもそもオープンカーを買う際に神妙な顔つきで考えること自体がナンセンス”なのかもしれないけれど。
(マット・バート)
ヴォグゾール・カスケーダ・エリート1.6i
価格 | £28,310(419万円) |
最高速度 | 235km/h |
0-100km/h加速 | 8.5秒 |
燃費 | 14.9km/ℓ |
CO2排出量 | 158g/km |
乾燥重量 | 1658kg |
エンジン | 直列4気筒1598ccターボ |
最高出力 | 200ps/5500rpm |
最大トルク | 28.6kg-m/1650-3500rpm |
ギアボックス | 6速マニュアル |